2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年3月24日

 3月2日付のTaipei Times紙の社説が、ロシアによるウクライナ侵略を受け、台湾の抑止力向上の必要性を説き、台湾による核兵器計画の再開にまで踏み込んだ提言をしている。

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 ウクライナへのロシア侵略の状況を見ていれば、もしウクライナがかつて保有していた核兵器の一部でも今日保有していれば、現在のようなウクライナへのロシア軍による軍事侵攻を防ぐことが出来たかもしれない、と Taipei Times紙の社説が述べている。

 本社説は、「今日のウクライナが明日の台湾」にならないために、国防上核兵器を含む高度の抑止力を保持すれば、中国が将来、「台湾統一」を目指して台湾に軍事侵攻することを躊躇することとなるかもしれないと述べ、台湾にとっての今後の課題に言及している。実行は容易ではないであろうが、検討に値する興味深い内容である。

 本社説によれば、台湾は秘密裏に核兵器開発計画(新竹計画:Hsinchu Project)をもち、1964年に最初のテストを実施した。しかし、88年、米国からの圧力でこれを中止した。その結果、台湾は今日、核兵器を保有していないだけではなく、米国の核の傘にも入っていない。

 これに反し、中国は急速に核兵器の近代化を進め、昨年後半には、衛星写真が新しい核ミサイル格納庫を映しだしたりしている。北京はプーチンに倣い、将来、中国が台湾に侵攻する場合に、もし第三者(米国)の介入があれば、彼らは核の報復を受ける、と威嚇するだろう。このようなシナリオであれば、米太平洋艦隊に台湾海峡に入るよう命令を下すことは、「米国大統領にとって相当の勇気を要することとなるだろう」という。

 本社説の述べる今後の台湾にとっての抑止力向上の選択肢は次の3点である。

(1)台湾にとって、1つ目の選択肢は、現在、台湾の保有する中距離ミサイル(「雲峰」)の射程距離(2000キロメートル)を延長し、重要な通常戦力による抑止力として使用することだ。こうすれば、北京、上海なども射程距離内に入る。

(2)第2の選択肢は核兵器の「持ち込み」である。米国の核ミサイルを台湾に配備することは、もう一つの選択肢となる。米台間に外交関係のあった時期ではあるが、62年まで米空軍は TM-61マタドール・核搭載ミサイルを台南空軍基地に配備していた。

(3)台湾自身が、米国の支援のもと、あらためて核兵器開発計画を再開することは、第3の選択肢である。

 ロシアのウクライナ侵略が中国の「台湾統一」に今後如何なる影響を及ぼすかは、現段階では想像の域を出ない。しかし、あらゆる可能性に対峙できるように準備を行うことは台湾の防衛にとって、喫緊の課題だろう。


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