2024年12月23日(月)

Wedge SPECIAL REPORT

2022年3月19日

「Wedge」2021年6月号に掲載され、好評を博した特集「押し寄せる中国の脅威 危機は海からやってくる」記事の内容を一部、限定公開いたします。全文は、末尾のリンク先(Wedge Online Premium)にてご購入ください。
※年号、肩書、年齢は掲載当時のもの
急速に台頭してきた中国が日本の海にかつてないほどの緊張感をもたらしている。迫りくる有事への「備え」について危機管理のプロたちに語ってもらった。
(聞き手、構成・編集部 大城慶吾、野川隆輝)
(WATARU SATO)

編集部(以下、──) 近年、中国公船(中国政府に属する船舶)の尖閣諸島周辺海域での動きが活発だ。最前線で対峙する海上保安庁の現状は?

秋本 中国公船を接続水域(編集部注・領海の外側に広がった24海里までの水域)内で確認した日数と延べ隻数は、2018年に159日・615隻、19年に282日・1097隻、20年に333日・1161隻と、この3年間で激増している。

秋本茂雄 Shigeo Akimoto
元海上保安監
公益財団法人海上保安協会理事長。1957年生まれ。海上保安大学校卒業後、海上保安庁に入庁。尖閣諸島を管轄する第11管区海上保安本部長や海上保安監などを歴任。2017年に退官。 (WATARU SATO)

 昨年、同海域内で確認された中国公船のうち、約6割は、2000㌧級以上の大型船だ。また、領海内で操業する日本漁船を中国公船が執拗に追いかける事態が頻発しており、操業を止めるまで近くで〝圧迫〟を続ける状態も見られる。10月には最長で57時間39分連続して居座ったこともあった。

 数年前までは、3隻もしくは4隻の船が一団でやってきて、常に行動を共にしていたが、近年は2隻ずつに分かれて活動したり、海上が荒天となって現場を離脱するときには3000㌧級以上の大型船1隻だけを残してその他の小さな船は現場を離れたりする動きが見られる。それだけ臨機応変な対応ができるようになっており、指揮命令系統も複雑に機能させることができるようになっているのだと思う。

──対応にあたる際の難しさとは。

秋本 まず明らかにしたいことは、中国公船が領海に侵入する行為自体が「国際法違反」だということ。日本はもっと、このことを国際社会に訴える必要がある。そうした中で海保は、国際法に則り、決して熱くならず、「冷静かつ毅然とした対応」をとっている。相手の隻数以上の巡視船を現場に配備し、マンツーマンの対応が基本だ。中国公船が領海に侵入した際には、無線や電光掲示板での警告、必要に応じて進路規制を行う。日本漁船に接近した場合には、両者の間に巡視船を入れて漁船の安全を確保する。こういった対応を日夜繰り返しており、24時間365日、常に体制を整えている。

 中国公船を警備する際、2隻が並走するが、相手がいつ進路を変えるか分からない状況下で、不測の事態や衝突が起こらないように巡視船を操り、相手の船を監視する必要がある。例えるなら「〝針の先端〟で突き合うような状態」である。現場海域は台風が来襲し、大時化になることもある。そうした中でも巡視船は現場に残り、領土・領海を守っている。乗組員の体力的・精神的負担は想像を絶するものがある。


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