2024年7月14日(日)

Wedge SPECIAL REPORT

2022年3月19日

中国海警局や中国海軍の能力は?

──海保と海上自衛隊の連携も重要になる。海保と海自の任務の棲み分けや協力体制はどうなっているのか。

武居 海保は海上保安庁法第25条(編集部注・この法律のいかなる規定も海上保安庁又はその職員が軍隊として組織され、訓練され、又は軍隊の機能を営むことを認めるものとこれを解釈してはならない。以下、25条)の規定により、軍隊機能を有しない法執行機関であり、防衛行動はできない。防衛行動を担うのが海上自衛隊である。

武居智久 Tomohisa Takei
元海上幕僚長
三波工業特別顧問。1957年生まれ。防衛大学校を卒業後、海上自衛隊に入隊。米国海軍大学指揮課程卒。2014年に第32代海上幕僚長に就任。16年に退官。17年、米国海軍大学教授兼米国海軍作戦部長特別インターナショナルフェロー。(WATARU SATO)

 敗戦により日本では海上保安や救難業務を扱う政府組織が消滅した。その後、日本周辺海域で漁船の拿捕や朝鮮半島からの密入国・密輸入など不法行為が頻発したため、日本は自ら海洋秩序を維持することが期待されるようになった。当時、海保を創設しようとした米国に対し、英国やソ連が「海軍の復活」を危惧して強く反対した。海保は軍隊組織として構成された米国の沿岸警備隊をモデルとしたが、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)の意向により「非軍隊」でなければならず、こうした経緯から25条が生まれた。

 以後、海保はこれをアイデンティティとして法執行に純化してきた。一方で海自も前身の海上警備隊の創設以来、防衛行動を重視してきたことで、長い間互いに連携を疎かにしてきた。

 しかし、1999年の能登半島沖不審船事件や2009年から現在も続いているソマリア沖アデン湾での海賊対処活動を受け、実質的かつ長期的に協力しなければならない状況が発生した。さらに平和安全法制の整備等により緊密な連絡体制や情報共有など、具体的な協力関係が強化されている。今年4月にも若狭湾で共同訓練を実施しており、部隊間の相互運用性は高まっている。両者の連携は、現行法制度の下では歴史的にも〝最良の状態〟だ。

──中国海警局や中国海軍の能力をどう捉えているか。

武居 中国はこの十数年間で急速に軍事力の増強や近代化が進んだ。09年に中国海軍の練習艦「鄭和」が広島県の呉市と江田島市に寄港した際、海自の訓練用短艇の細部まで写真撮影したり、メジャーで大きさを計測したりする姿が見られた。ところが、現在は中国の基準で最新鋭の艦艇や航空機を造り、外洋海軍にまで発展した。当時、我々と価値観を共有させるように日米が協力して関与したが、期待に反して〝モンスター海軍〟に育ってしまった。

兼原 12年、中国公船による尖閣諸島周辺への主権侵害行動が恒常化した。国際的には非常識な話だが、警察力を使った事実上の侵略である。背景には当時の民主党政権の迷走による日米関係の急速な冷え込みや東日本大震災による国内の混乱などもあり、中国に侮られたのだろう。日米関係が悪化すれば、中国の行動はより〝大胆〟になる。中国は常に〝日米分断〟を狙っている。米中関係が良いときは……

◇◆◇ この続きを読む(有料) ◇◆◇

◇◆◇ 特集の購入はこちら(有料) ◇◆

 
 
Facebookでフォロー Xでフォロー メルマガに登録
▲「Wedge ONLINE」の新着記事などをお届けしています。
Wedge 2021年6月号より
押し寄せる中国の脅威
押し寄せる中国の脅威

「中国の攻撃は2027年よりも前に起こる可能性がある」─。

アキリーノ米太平洋艦隊司令官(当時)は今年3月、台湾有事への危機感をこう表現した。

狭い海を隔てて押し寄せる中国の脅威。情勢は緊迫する一方だ。

この状況に正面から向き合わなければ、日本は戦後、経験したことのないような

「危機」に直面することになるだろう。今、求められる必要な「備え」を徹底検証する。


新着記事

»もっと見る