この地域が戦火に見舞われることは誰も望んでおらず、絶対に避けなければならない。
コロナ禍での北京五輪開催で自信を深め、成果を強調して秋の中国共産党大会に臨む。異例の3期目を勝ち取ったその先に、習近平国家主席が見据えるものは何か。強硬姿勢を隠さなくなった中国の言動や「中国の夢」として掲げる「中華民族の偉大なる復興」という〝野望〟を直視すれば、米国や台湾が具体的な時期を示して〝有時〟の分析に走るのも無理はない。
だが、20XX年を的中させることが勝利ではない。最悪の事態を招かぬこと、そして「万が一」に備えておくことが重要だ。政治は何を覚悟し、決断せねばならないのか、われわれ国民や日本企業が持たなければならない視点とは何か——。
まずは驚くほどに無防備な日本の現実から目を背けることなく、眼前に迫る「台湾有事」への備えを、今すぐに始めなければならない。

昨年10月、台湾の邱国正・国防部長(大臣相当)が、中国は2025年には台湾への全面的侵略が可能になるとの認識を示した。先立つ3月に米上院軍事委員会、6月に下院の同委員会においても、27年までの侵攻の可能性が指摘されている。
08年、中国海軍は、駆逐艦など4隻を艦隊行動として初めて太平洋に進出させた。あれからわずか13年、今や艦艇数で約355隻を保有し、米海軍の約295隻を凌駕する世界最大級の海軍力を誇る。さらに、現在の日米の防衛力では迎撃できないマッハ5.0(時速6120㌔メートル)以上で飛翔する極超音速ミサイルを保持するなどの大軍拡を続ける中国の5年後(27年)の姿は、われわれの予想を超える軍事力を保持する可能性がある。

(出所) 防衛省『令和3年版防衛白書』を基にウェッジ作成 写真を拡大
毛沢東を超える「歴史的成果」を欲しがる習近平に、侵攻能力に自信を持った軍が「勝てる」と報告したとしたらどうなるだろうか。冒険心に駆られた習近平が、過信と誤算に陥り、侵攻を決断する可能性は捨てきれない。習近平は、台湾が独立に向かう場合は武力統一も辞さないと恫喝を繰り返しているが、武力統一の口実を作為するため、台湾における独立派を扇動することはあり得る。