2024年12月21日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年3月20日

 すなわち、エジプト人は元来は長い歴史を持ち、常識的で穏やかな上品な(noble)な人々だが、ムバラクという凡庸な人物の下の長期の独裁によって、表向きは安定しているように見えて、反米、反ユダヤ、反近代化の思想ないしは雰囲気の蔓延を許し、それが遂にはムスリム同胞団による権力の掌握を許してしまった、という嘆きです。

 それが、おそらくは現在のエジプトの正確な分析なのでしょう。しかし、アジャミはそれをどうしたら良いのかについて、何も書いていません。

 アジャミが嫌悪するのは、エジプトの伝統的な政治的成熟と対立する反体制的、反米的思潮です。日本でいえば、左翼反体制的、反米思想に当たると言ってよいでしょう。

 

 この論文で一つ不思議なのは、サブタイトルで、内務警察官僚の腐敗堕落を攻撃しながら、論文の中にはそれについての論述が無いところです。

 そこで、思い切って、推測をたくましくすれば、この論文は、軍の介入を期待する意図があるのではないかとも思われます。というのも、内務警察官僚の腐敗に言及しながら、軍には一切の言及が無いのです。

 中進国、特に、トルコ、タイ、エジプトなどでは、軍は、社会のエリートであり、中産階級に属し、知的な能力主義の集団です。現在、モルシ政権は、軍の中でも、ムスリム同胞団の支持者を登用し、軍の支配も固めているようですが、おそらく軍の多数はそうでないのでしょう。それが、アジャミの唯一の希望なのではないかと、想像されます。

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