2011年2月11日は、歴史の国・エジプトにとっての歴史的の日となった。
「現代のファラオ」としてこの国に君臨していたムバラク大統領はとうとう、民衆の要求する通りに辞任した。1月25日から始まった民衆の反乱は、わずか18日間で、30年間も続いた独裁政権を倒した。
かつての中国民主化運動に携わったことのある私は、このニュースを聞いて、丸2日間、興奮が収まらなかった。私たちの運動は「血の鎮圧」の中で失敗に終わったが、エジプトの若者たちは完全な勝利を手に入れた。彼らのために、両手を上げて「快哉」と叫ぶべきではないのか。
そして、彼らの成し遂げたこの歴史的偉業は、中国の未来にも一筋の光明が差し込むものではないかとも思っている。というのも、「18日間で30年間の独裁政権を倒した」この実績は、独裁体制の意外な脆弱性を示したのと同時に、インターネット時代の新しい「革命戦略」の見本を提供してくれたからである。
「革命の利器」の発達
考えてみれば、普段なら強そうに見える独裁体制は、その内実は脆いものだ。独裁体制は常に体制維持を最大の目標としているが、そのためには権力の集中をはかり、強権を持って民衆を抑えつけなければならない。が、このような統治方式は当然、一部の権力者による権力の私物化が生じ、腐敗の蔓延や人権の抑圧、貧富の格差拡大をもたらして民衆の不平不満の高まりを招き、体制崩壊の内因を作り出しているのである。
その一方、権力の不当な介入や貧富の格差の拡大によって国民経済が歪められた結果、民衆の生活を支える経済そのものは常に破綻する危険性にさらされているが、経済がどこかで行き詰まって大量の失業者発生やインフレなどの問題が生じてくると、独裁体制を維持する最後の支柱が崩れて民衆の不満は一気に爆発することになる。
そして、フェイスブックやツイッターなどの新しいメディアが普及している昨今、民衆の不満の爆発はまさにインターネットの力によって一気に広がり、「不特定多数」の民衆の自発的参加による大反乱の発生に発展するのである。
組織動員型の革命の場合、一部の活動家が時間をかけて組織を作り、さらに時間をかけて民衆の説得・動員を行わなければならないし、その準備段階において体制によって潰される場合が多い。しかしネットでの連帯による反乱となれば、独裁政権が事態を把握して対策を取る前に、反乱はあっという間に燃え広がり、見る見るうちに政権の対応可能な範囲を超えた大規模な民衆運動となって独裁政権を一気に窮地に追い込むことが出来るのだ。それは、まさに今回の「エジプト18日革命」の示した通りの展開である。
言ってみれば、独裁体制の下では反乱の起きる可能性が常に存在しているが、インターネットという「革命の利器」の発達が、反乱の発動と広がりを容易にして革命に現実性を与えてしまうのである。勿論、経済状況の悪化による民衆の窮状と不満の増幅も、広範囲の大反乱が起こる前提条件ともなっている。
中国は社会問題の「総合火薬庫」
エジプト革命に例を見た、このような「新型革命」への考察を踏まえて、現在、世界最大の独裁国家である中国に目を転じてみると、今の中国もまさに、次のエジプトとなる可能性がもっとも高い国となっているのではないかと思う。