2024年6月19日(水)

野嶋剛が読み解くアジア最新事情

2022年5月16日

香港人を受け入れる英国の動き

 いま香港人が移民のために向かう先として人気なのは、旧宗主国・英国である。英国は、香港情勢の悪化を受けて、これまでの対香港の移民政策を大転換した。歴史的な経緯から、香港人の未来に責任を負うべきだとの判断に基づく決断だった。

 97年の香港返還時、英国政府は「英国海外国民」(BNO)パスポートと呼ばれる旅券を、返還前の香港で出生した人に発行していたが、そのBNO旅券の制度を一新した。従来、このBNO旅券は英国籍であることの証明にはなるが、事実上は一時旅券的な扱いで、英国本国での居住権を保障するものではなかった。

 しかし今回、英国政府はBNO旅券保持者に対して、5年間の居住を認め、5年終了後も最低限の英語力さえ保持していれば、1年間の延長ビザを出し、その間に永久居住権の申請が可能だとしたのである。

 扶養対象者も同様の処遇を受けるため、家族で英国への移民が可能となる。一家庭につきおよそ40万円の生活支援まで認める厚遇ぶりだ。

 香港メディアによれば、現時点での申請資格者は香港人口の半数およその350万人に達するという。2021年10〜12月には1.56万人が申請したという。また2021年前半では10.39万人が申請したが、そのうち93%が認められて発券を受けている。

 かつて香港から海外に移民する人々は、米国、カナダ、豪州が三大目的地となってきた。

 その理由は英語が通じること、移民に開かれていたことだった。1980年代は特に、労働人口の確保のため、香港の移民は歓迎され、各地に香港人が集住して広東料理のレストランや香港の食品や雑貨などを売る店が林立するリトル・ホンコンが生まれた。

 今回の移民ブームでも、この三国は有力な移住先になっているが、かつては狭き門であった英国が大きく門戸を広げ、選択肢に加わった形である。

高度人材が流出するという現実

 今回の香港の移民ブームの特徴は、彼らの多くが高学歴で働き盛りの香港人であるという点だ。

 調査会社「IFFリサーチ」によれば、昨年のBNO旅券取得者のなかで、69%が高学歴の保有者だった。職業別では「プロフェッショナル」と呼ばれる管理職が39%、それに準じる高い職歴の人々が26%いた。その他も、経営者、高級官僚などが11%、行政職やセクレタリー職が13%。

 香港社会の根本を支えている中・高レベルのキャリア保有者が多くを占めているというデータが出ている。こうした移民希望の人々の年齢は30歳から50歳の働き盛りが当然多くを占めている。

 そのマイナスのインパクトを受けているのが企業や病院などだ。多くの企業が人材流出に悩まされているか、悩まされることを不安視している。また、香港で一定以上のレベルの官職につく場合、前述のBNO旅券保有者は旅券の放棄を求められているとされ、そのことで行政機関から離職する人々も続出しているという。


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