2024年12月22日(日)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2022年4月19日

 香港政府のトップ、行政長官を決める選挙が来月8日に行われるが、立候補者は李家超(ジョン・リー)氏一人だけ。選挙は形式だけの信任投票になることが確定した。警察官出身の豪腕トップは香港社会に安定をもたらすことができるのだろうか?

香港行政長官に〝当選〟した李家超(ジョン・リー)氏(AP/アフロ)

一枚岩でない香港内部を一本化

 李家超氏は1957年生まれの65歳。大学に合格するも家庭の事情で進学せず、警察官となった。優秀な刑事として数々の事件の捜査にあたり、出世街道を邁進してきたという。

 その道は警察では終わらず、2012年には保安局(警察を監督する政府部門、日本の警察庁に相当)副局長に就任し、官僚へと転身した。17年には保安局局長に就任。警察官出身の局長は1997年の香港返還以来初だという。

 そして、2019年に始まった抗議デモでは強硬な鎮圧を指揮したことで知られる。デモ参加者からは蛇蝎(だかつ)のごとく嫌われた李だが、従来の対策では手ぬるいといらだっていた中国共産党はその豪腕ぶりを高く評価した。かくして、21年6月には香港政府のナンバー2にあたる政務司司長に任命されることとなった。

 行政長官は最大で2期10年までと定められている。現職の林鄭月娥(キャリー・ラム)長官が再度出馬するかが注目されていたが、4月に不出馬を宣言した。今年頭からの新型コロナウイルスの感染拡大を防げなかったことで、中国共産党の支持を得られなかったためとみられている。

 香港メディア「香港01」によると、中国政府の香港出先機関である香港連絡弁公室(中連弁)は4月初頭、行政長官選挙に投票権を持つ選挙委員会委員を呼び出し、「李家超が唯一の候補者」と伝達したという。それ以前には、元行政長官の梁振英氏が立候補の意思を示していたほか、政府ナンバー3の陳茂波(ポール・チャン)財政長官の出馬も取り沙汰されていた。

 過去には親中派の分裂選挙となったこともある。親中派とはいえ一枚岩ではなく、その中での派閥争いが行われており、中国共産党も香港内部の争いに積極的に介入はしてこなかった。今回は中国共産党が強く介入し、「意中の人」である李氏に一本化するよう強くした指導したことで、李氏以外の立候補者はゼロという形で収まった。


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