「Wedge」2022年6月号に掲載されている特集「現状維持は最大の経営リスク 常識という殻を破ろう」記事の内容を一部、限定公開いたします。全文は、末尾のリンク先(Wedge Online Premium)にてご購入ください。
味の素の技術者として、バイオ精製工程のプロセス開発、米国工場のマネジメント、国内から撤退の危機にあった工場の再生など、一貫して現場を持ち場にしてきた五十嵐弘司氏。『技術者よ、経営トップを目指せ!』(日経BP社)という著作を持つ五十嵐氏に、今の日本企業に求められることを聞いた。
聞き手・編集部(大城慶吾、友森敏雄)
写真・井上智幸
聞き手・編集部(大城慶吾、友森敏雄)
写真・井上智幸
イノベーションは
積み重ねの延長
いわゆる「イノベーション」について、勘違いがある。それは、ゼロからイチを生み出すこととしてとらえていることだ。イノベーションとは新しい事業を成立させることだ。そんな発想の原点となったのが、43歳になった1998年から7年間、米国アイオワ州に駐在したことだ――。
そこで、米製薬大手シグマアルドリッチ(現メルク)の創業副社長だったジャック・ヒートンに出会った。彼は、ヘッドハントされて味の素に移籍していた。早速問われたのは、「仕事で何を目指しているのか?」ということだった。
私は、「お客様に安価で高機能、高品質な素晴らしい製品をつくって提供することです」と答えた。
するとジャックはこう言った。「間違ってはいない。ただし、もっと重要なことは、お客様の先にいる消費者が求めているものを提供することだ。良い製品を作り、売って儲けるだけでは事業とは言えない。本当の意味での事業とは、消費者が求めている『モノやコト』を提供することだ」。