2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年4月3日

 中国は、北朝鮮を放棄することを考えるべきである。北朝鮮を諦める最上の策は、南北統一を促進するイニシアチブをとることである。朝鮮半島の統一は、米国と日本および韓国との間の戦略的同盟を弱体化させるのに役立ち、北東アジアから中国への地政学的圧力を緩和し、台湾問題の解決にも助けとなるであろう。

 次善の策は、中国が影響力を行使して、北朝鮮に親中的政府を樹立し、それに安全保障を与え、核兵器を放棄して正常な国に向かうよう圧力をかけることである、と論じています。

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 北朝鮮による3回目の核実験を受けて、中国側から北朝鮮への不満の表明が増えていますが、この論説は、そうした中でも、驚くべきドラスティックな内容を含んでいます。仮に、論説が説くような政策が、中国政府によって国家政策として取り上げられれば、東アジアの国際政治情勢は一変する可能性があります。

 従来は、中国政府はいかなる場合でも北朝鮮政府の存続を危うくする程度までの制裁は行わないというのが常識でした。それは、中国は二十一世紀最大の問題は台湾をめぐる米中対立と捉えており、自由民主主義勢力が鴨緑江まで迫るのを阻止しておくのが戦略的利益と考えているだろう、と推測されたからです。

 しかし、いみじくもこの論説が指摘しているように、イデオロギーだけが国家関係を律するものではなく、自由民主主義国である韓国が、米韓同盟、日韓友好関係から離れられないということさえも、真実でないかも知れません。中国が朝鮮半島の平和的統一支持に踏み切った時は、心理的に親中反日である韓国が中立路線をとり、米国との同盟から離脱する可能性は排除できません。その場合、中国は平和的手段によって、その東北辺の安全保障を達成することになります。

 それは、日米同盟そのものにも影響を与える可能性があります。日米同盟は、日本防衛の他に朝鮮半島と台湾の安全を守ることが目的であり、朝鮮半島問題が消えれば、台湾をどうするかということに議論が集中されます。そして、その時の米国の政府、議会の反応は、東アジアの情勢如何によって予断が許されなくなる恐れもあります。


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