日本には何ができるのか
米国とカナダ、英国と欧州大陸のように、国際間の大気汚染はさまざまな場所で発生する。ただ、英米との比較では、日本と中国では汚染のレベルがより深刻だ。加えて、このままでは中国の石炭使用量と自動車台数の増加により汚染が年々悪化するのは確実だ。
中国でも例えば生産された石炭を選炭し、硫黄分を低下させる、あるいは発電所に脱硫装置などの環境対策設備を設置すれば問題を軽減可能だが、コストアップにつながることから、残念ながら厳しい規制なしでは導入が直ぐに進むことはないだろう。選炭の過程では水質汚濁が引き起こされる可能性もあり、排水処理の方法によっては異なる環境問題が引き起こされかねない問題もある。
米国が大気浄化法を改正し酸性雨を抑えたように、中国政府が厳しい規制を導入し発電所、工場からの大気汚染物質の排出を抑える一方、エネルギー効率の改善により二酸化炭素の排出量を抑制することに期待するしかないのだろうか。
中国のGDP当たりのエネルギー消費量は、日本の7倍だ。GDPに占める製造業の比率が発展途上の中国では高く日本の2倍の40%ある。しかし、産業構造の違いを考えても中国のエネルギー効率は相当に悪く改善の余地が大きい。日本ができることは、先進的な環境、省エネの技術を中国に提供し、さらなる改善を行うことだ。
例えば、日本の石炭火力発電所ボイラーの燃焼効率は、平均でも中国の石炭ボイラーより20%はよいだろう。最新鋭のボイラーはもっと効率がよい。日本の最新鋭技術を用いることにより、大気汚染と二酸化炭素排出量の抑制につながる。燃料消費を削減するハイブリッド車の導入も大気汚染を改善する。
エネルギー効率の改善は燃料費の抑制につながり収益を生む。さらに必要な費用の問題を解決するためには、現在日本政府により検討されている温暖化対策のための二国間クレジット制度などによることになる。
原子力技術の協力も必要だろう。中国の200基以上の原発の大半は、冷却水取り入れの必要性から、将来海岸線上に並ぶことになる。現在中国の原発を支えている技術は、一部ロシア、カナダ製があるものの、フランス・アレバと米ウエスティングハウス(東芝)が主体だ。
東芝・ウエスティングハウス、日立・GE、三菱重工が原発技術を維持しなければ、中国をはじめとする新興国が建設をスムーズに進められない可能性がある。日本の原発政策の検討に際しては新興国の化石燃料使用量抑制と温暖化問題への取り組み支援にも主眼が置かれなければならない。日本と世界にも大きな影響を与える政策だ。
日本から最新鋭の環境、燃焼技術、設備を提供し、さらに、原子力技術の支援を行うことが、結果的に日本での大気汚染問題の解決にもつながる。
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