2024年11月23日(土)

中島厚志が読み解く「激動の経済」

2009年3月13日

 もっとも、内外経済にとってこれからプラス材料が目白押しになっていることは見逃せない。

 ひとつは、来年度予算と第二次補正予算が成立したことである。そもそも、第一次補正予算まで入れると、追加的な財政措置(いわゆる真水)の金額は12兆円に達しており、米国の経済対策が09年度についてはGDP比1.3%の財政措置となることや、EU27カ国の財政措置が平均でGDP比0.85%となっていることと比べれば、日本の経済対策の規模は決して見劣りしていない。

 経済対策の効果を過大評価してはならないが、それでも相応の経済効果は期待できる。高速道路料金は値下げとなるし、定額給付金も支給される。4月以降は予算規模が08年度当初予算対比で5.5兆円増(+6.6%)の09年度予算が執行されるが、一般歳出と地方交付税等を足した額は規模、前年度伸び率とも史上最大である。

 さらに、この4月からはハイブリッド車などの購入に際しては自動車取得税と重量税が完全に免除されるし、1月に遡及する形で最高600万円に及ぶ住宅ローン減税も実施される。しかも、今年に入ってからの一段の景気悪化に伴い、政府は新たな経済対策を検討する姿勢を排除しておらず、遠からずさらに大規模な財政支出が出てくるようにも見える。

 また、主要国の経済対策も効果が期待できる状況となりつつある。米国では大型の経済対策が実行される段階に入っており、4月から所得税減税が行われる。日本の最大輸出先である中国でも、昨年11月に発表された総額4兆元(約58兆円)に及ぶ経済対策が実施されつつあり、生産や設備投資が持ち直す動きとなっている。

 3月5日から開催の日本の国会に当たる全国人民代表大会(全人代)でも、中国政府は大規模な減税を表明しており、景気をしかるべく拡大させるために断固とした手段を採る決意が見て取れる。

近づきつつある景気底打ち

 内外景気はこれからも厳しいと見込まれるが、それでも、いくつかのプラスな経済指標にこれから主要国での経済対策の効果が出始めることも勘案すると、日本経済は悲観色一色ばかりでもない。それは、経済の焦点が、今後どれだけ景気が悪化するのかという点から、いつ企業の生産が回復に転じるのか、いつ日本や主要国の景気が底打ちするかに転じつつあることを意味する。

 今回の金融危機を百年に一度と形容することが一般化しており、09年の日本経済の成長率は記録的なマイナス成長となる可能性が強い。一方、経済悪化に歯止めが掛かる兆候が出てきていることも確かである。むしろ、景気悪化が急速であった分底入れも近いということが言える。

 もちろん、世界的な金融危機に克服の道筋がつけられておらず、世界経済の中心となる米国で財政赤字拡大から打つ対策が限られる現状では、底入れしても回復がすぐV字型になることは到底期待できないし、底堅くすら進むまい。それでも、景気の底入れが見えれば、慎重な企業行動にも変化が出てくる可能性が高まる。

 その際には、金融危機の震源地となっていない日本は、過大な債務が民間部門にない分身軽で有利なことに変わりない。世界経済の回復がないかぎり、輸出主導の日本経済の成長率回復が見込めないことはあるものの、内外経済の明るい兆候を軽視することはできない。


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