ロシアのウクライナ侵攻と、飛来する中国軍機の激増で、中国の台湾侵攻が現実味を増している。中国軍機の台湾周辺の飛行は常態化しているが、5月末、米議員団が台湾を訪れた際は、30機が台湾南西部の防空識別圏(ADIZ)に侵入。中国軍東部戦区の報道官は「米台結託」への対抗上必要だったと言い放った。台湾はウクライナ同様、民主主義陣営と強権主義勢力の最前線となった感があり、台湾自身もそう認識している。
バイデン米大統領が5月23日、訪問先の東京で、「台湾防衛に軍事的に関与するか」と聞かれて「イエス」と明言。「それが私たちの約束だ」と2回も繰り返した。直ちに台湾外務省の欧江安報道官は「心からの歓迎と感謝」を表明した。
バイデン氏の発言は、失言だったとの見方が台湾でもあるが、米国の台湾への武器供与は着実に進展。米国は台湾に、ウクライナ軍同様、軍事超大国を相手に「非対称戦(軍事力が大きく異なる当事者間の戦争)」を戦わせようとしており、武器供与を通じて誘導している。
中台の戦力差は圧倒的だ。常備兵力は中国の約200万人に対し台湾は20万人と10分の1。空軍も10分の1、海軍は7分の1。台湾に核兵器はなく、戦略ミサイルもない。正面衝突すれば台湾側に勝ち目はない。
台湾軍は長らく、上陸してきた中国軍を水際で叩く作戦を基本としてきた。しかしこれだと中国軍の上陸を許し、すぐに血みどろの市街戦が始まる恐れが高かった。米軍は台湾軍に、遠距離からの精密なミサイル攻撃によって、中国軍が大陸側にいる段階で、極力損害を与える戦いに転換させようとしている。
台湾メディアの『上報』によると、米政府は5月、台湾への自走砲「M109A6(パラディン)」の売却計画を延期した。また、対潜ヘリコプター「MH60R(シーホーク)」の価格を急に吊り上げて、台湾国防部(国防省)に購入を断念させた。代わりに、高機動ロケット砲システム「ハイマース」を買わせようとしている。
ただ台湾では、米軍の装備をアテにするのは禁物との指摘も出ている。昨年崩壊したアフガニスタン軍、1970年代の南ベトナム軍、なにより40年代の中華民国軍は、米軍の近代兵器で武装しながらも、「非対称戦」でイスラム過激派や、共産ゲリラに敗退した。『上報』によれば、台湾の野党・親民党の広報担当者、吳崑玉氏は「非対称戦は正しいが、肝心なのは装備でなく、精神だ」と指摘した。
もっとも、世論調査の結果では、台湾人の士気は十分旺盛だ。台湾国防部・国防安全研究院が台湾政治大学に委託して行った今年3月の世論調査によると、中台戦争の際「台湾支援のため米軍が出動するか」との問いに対し「ある」が40%で、昨年9月の57%より大幅に低下した。ウクライナ戦争が、米国への信頼に影響した。
一方で、米軍来援がなくても「戦場に」行くとの回答が、「台湾軍」を信頼する場合は89.8%、信頼しない場合でも60.4%に上った。米軍来援と台湾軍の能力をともに信じる場合、「戦場に行く」は95.6%とほぼ全員に近い。
世論調査の結果を分析した国防安全研究院の李冠成・助理研究員は、米軍来援よりも「台湾軍への信頼と、自主防衛意識に明らかな関連がある」と指摘。「民衆の高い防衛意識は、国軍改革の助けになる」とした。今後、徴兵制の復活などを検討することになりそうだ。一旦緩急あれば、台湾はウクライナ以上の戦いをするのではないか。
〝人手不足〟に喘ぐ日本で、頻繁に取り上げられるフレーズがある。「外国人労働者がいなければ日本(社会)は成り立たない」というものだ。しかし、外国人労働者に依存し続けることで、日本の本当の課題から目を背けていないか?ご都合主義の外国人労働者受け入れに終止符を打たなければ、将来に大きな禍根を残すことになる。