紀州藩からの答えはなく、東山は一計を案じる。紀州藩主の吉宗(平)が夜陰に乗じて、禁漁を破って魚取りに興じていることを知って、奉行所の船で捕手を寄せ、吉宗を捕える。
奉行所の裁きの白洲の場で、縄目の恥をさらす吉宗に対して、東山は一貫して吉宗にはあらず、という態度で臨む。最後は、友人の蘭方医(勝村)に吉宗を診断させ、しれ者であることを理由にして解き放つ。
「覚えておれ」という吉宗に東山は言い放つ。「紀州様は禁漁の地で魚など捕らぬ」と。
八代将軍となった吉宗から江戸表に呼び出された東山に対して、周囲は伊勢時代の怨念を吉宗が晴らすものと思い、東山の切腹は免れないと考える。許嫁との婚約も破棄されることになる。
江戸城における吉宗と東山の緊迫する対面の場面。「あのとき、覚えておれといったのを忘れまい」と吉宗は迫る。
平然として、東山は答える。
「あのときのしれ者と上様は似てはいらっしゃいますが、天下の祭りごとを司る上様があのようなことはなさいませぬ」と。
破顔一笑、そして大笑いする吉宗。
東山に向かって厳粛な面持ちとなる。
「南町奉行を命ず」と。
東山越前のさっそうとした登場ぶりである。
演じる人によって登場人物の描き方に
陰影が加えられる
ドラマは一気に展開して、最初の「大岡裁き」のストーリーに突き進む。
吉宗の将軍就任によるご赦免によって、八丈島の遠島から16年ぶりに江戸にもどってきた飾り職人が、殺したはずの友人の小間物屋が生きていたことを知る。島流しの間に母親を失った職人は、小間物屋を殺そうとする。