2024年7月18日(木)

この熱き人々

2013年5月23日

 「都市が素晴らしいところで、建築は都市に向かってつくると思ってきたけど、今、都市よりも地方にこそ未来につながる何かがあるという印象を強くもっています。厳しい状況の中でも農業や漁業の未来を語る人がいる。そこで地に足を踏ん張って立ち上がろうとする人たちがいっぱいいる。新しい建築もそこから生まれるんじゃないかと思っているんです。人を排斥するありようへの根源的な疑問が生まれると、21世紀の建築が変わる可能性があります」

 10坪の「みんなの家」は、そこで魂が癒されるだけでなく、地元の人が建築家とともに考え影響し合いながら一緒に作り上げ、そこに人が集まり語り合うことで暮らしや町を考え、言葉がエネルギーを生んでいく。建物が人を呼び、人を育み、人が町を創る。そんな場になってくれたらと伊東は願っている。

 「『みんなの家』は、小さいけれど建築の原点なんです。今、建築家が社会的な信頼を回復できる機会が与えられているんだと思います」

 「みんなの家プロジェクト」も広げたい。農業支援の「みんなの家」も進行中。震災直前に立ち上げたNPO「これからの建築を考える」では週末に建築塾を開講し、「子ども建築塾」も始めた。エネルギー消費を抑え自然の中で建物が呼吸するような図書館「みんなの森 ぎふメディアコスモス」のプロジェクトも進んでいる。

 「休みがない……30代はヒマだったのに、何でこんな年になって人生で一番忙しくなるのかねえ」

 71歳。3月には、建築界のノーベル賞といわれる米国のプリツカー賞を受賞した。疲れを感じさせないのは、人生で一番パワーが漲(みなぎ)っているからなのだろう。

(写真:佐藤拓央)

伊東豊雄(いとう とよお)
1941年、京城(現ソウル)に生まれ、信州下諏訪で育つ。大学卒業後、菊竹清訓建築設計事務所勤務を経て71年に独立。79年、伊東豊雄建築設計事務所設立。代表作「せんだいメディアテーク」「まつもと市民芸術館」「座・高円寺」のほか、海外でも多くの仕事が高い評価を受ける。東日本大震災以降、被災地に人が集う場をつくる「みんなの家プロジェクト」を主導している。

◆「ひととき」2013年5月号より

 

 

 

 
 

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