2024年11月22日(金)

Wedge REPORT

2022年7月10日

米国ですでに起きていた分断

 世界はいま、「分断」に悩まされている。米国が典型的な例だ。

 昨年1月6日、大統領当選者決定手続き中の連邦議会に暴徒が乱入、死者まで出た事件の公聴会が下院で今年6月から開かれている。そこにおける証言で、選挙結果を認めないトランプ前大統領の信じがたい言動が次々に明らかにされた。

 一方で、トランプ氏を支持する勢力は依然、強大、今秋の中間選挙に向けた予備選でもその支援を受ける候補者が続々、本選挙の指名を勝ち取っている。選挙後には米国の政治的分断が修復不可能なほどに広がる恐れも指摘されている。日本では、そうならないとだれが保証できるだろう。 

過去も同様事件、民主主義根づかないのか

 「分断社会」への懸念とあわせて、疑念を抱かせるのは、日本に民主主義が根付いているのかということだろう。選挙中に有力政治家に対するテロ事件が起こったのは、今回が初めてではない。

 比較的最近の例では、2007年4月の伊藤一長・長崎市長射殺事件がある。4選を目指す伊藤氏が遊説を終えて同市内の選挙事務所に戻ったところ、暴力団員の男に拳銃で撃たれ、数時間後に死亡した。

 日米安保条約が改定された1960年10月、衆院の解散直前に当時の日本社会党、浅沼稲次郎委員長が日比谷公会堂で演説中、17歳の右翼少年に刺殺された。激しかった安保反対運動を指導した浅沼氏への反発などが動機だった。 

 時をさかのぼって戦前。1932年2月の総選挙運動中、井上準之助元蔵相が東京の応援演説会場で、〝血盟団〟団員の青年に撃たれ、死亡した。

 政友会、民政党による激しい対立の時代、民政党の浜口雄幸内閣の蔵相として、金輸出解禁、緊縮財政を断行、軍事費を削減したことが国家主義団体からの恨みを買った。浜口首相自身も1930年にやはり右翼青年に撃たれ翌年、死去していた。

 井上、浅沼殺害からすでに100年近く、浅沼殺害からも半世紀以上が経過して安倍氏殺害事件がおきた。伊藤市長殺害といい、自らの意志を暴力をもって押し通そうとする風土には変化がないのか。

 10日は参院選党投票日だ。

 感情的な判断ではなく、罵倒に幻惑されることなく、冷静、客観的判断で一票を投じることが、分断社会を防ぎ、真の民主主義を根付かせる。それを自覚して投票所に足を運びたい。

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