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世界の記述

2022年7月9日

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宮下洋一 (みやした・よういち)

ジャーナリスト

在欧ジャーナリスト。1976年生まれ。スペイン・バルセロナ大学大学院でジャーナリズム修士。『卵子探しています』(小学館)で小学館ノンフィクション大賞優秀賞。『安楽死を遂げるまで』(同)で講談社ノンフィクション賞を受賞。近著に『ルポ・外国人ぎらい』(PHP新書)がある。
 

 安倍晋三元首相が襲撃された7月8日、欧州各国のメディアがこぞって速報を流した。主要紙は、ウェブ版でトップ扱いし、事件現場の写真を掲載しながら、大々的に報じた。ニュース専門番組は、プーチン大統領が行った下院幹部に向けた演説をトップに流し、安倍元首相の事件は、2番手か3番手に扱いにするなど、局による報じ方に差があった。 

フランス民放「TF1」はプライムタイムニュースで事件の詳細を報じた(YOICHI MIYASHITA)

 フランスのルモンド紙は8日(以下、全紙同日)、「安倍晋三元首相、銃弾を浴び、危篤状態」と見出しに掲げたが、数十分後には死亡の記事に差し替えている。フィガロ紙は、「安倍晋三元首相、襲撃され死亡」と報じた。

 同国のリベラシオン紙は、「安倍晋三元首相、選挙運動の最中に殺害される」との見出しを付け、安倍元首相が地面に倒れている写真を掲載。記事の後半は、「日本では、銃器のライセンス取得には長期間を要し、複雑だ。銃撃による年間の死者数も、極めて低い」と締め括っている。

 スペインEFE通信は、「シンゾウ・アベとは何者か。パールハーバーに戻った日本のリーダー」という見出しを掲げた。

 英国のガーディアン紙は、どこよりも早く日本の銃器規制について、長い記事を掲載。日本は世界でも「ガン・バイオレンス」の割合が低く、今回の事件は「極めて稀な暴力行為」だと報じた。

武器所持率の低さに注目

 ドイツの公共放送「DW」は、日本の襲撃事件を大きく取り上げている。スタジオと中継がつながっていたソニア・ブラシュカ記者は、「日本では、心肺機能停止という言葉を使い、死という表現を一旦避けることが多い」と指摘した。

 また、海外メディアの多くは、2年前に首相の座を降りた安倍元首相が、選挙キャンペーンで何をしていたのか、という疑問を抱いているようだった。ブラシュカ記者は、「体調不良のために職を続けられず、辞職したものの、政界のキーパーソンとして動いていた。自民党の選挙運動のサポートを彼が行うことは、大きな意味があった」と述べた。

 スタジオにいたDWのキャスターが「日本は暴力や銃撃事件は非常に稀だと聞くが、それは正しいか」と問いかけると、ブラシュカ記者は、次のように答えた。

 「日本での銃撃事件は、一般的には反社会的勢力のメンバーによるもので、それ以外の銃撃事件は極めて稀。容疑者が使用した武器も自家製のもので、購入した武器ではなかった」

 スペインの民放「テレシンコ」は、英国のジョンソン首相辞任のニュースの前に、安倍元首相の事件を約3分間にわたって報じた。キャスターが「世界で殺人事件がもっとも低い国のひとつ」と述べ、「就任期間が短い政府で、安倍氏は9年間にわたって偉業を成し遂げた」とも言及した。

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