2024年11月22日(金)

INTELLIGENCE MIND

2022年5月20日

 第二次安倍晋三政権では日本のインテリジェンス分野での改革が大きく進んだ。

 その原点は、2008年2月14日に内閣情報調査室が発表した報告書「官邸における情報機能の強化の方針」にある。これには日本のインテリジェンスについて改善すべき点が多々列挙されているが、その中で特に困難な課題が「対外人的情報収集機能強化」と「秘密保全に関する法制」であった。

 12年12月に成立した第二次安倍政権はこの2つの課題に取り組むことになる。

鍵になった政官の
トライアングル

 安倍氏が首相に返り咲くと、町村信孝衆議院議員と北村滋内閣情報官(当時)という政官のトライアングルによって日本のインテリジェンス改革が進んだ。

 このトライアングルで要となったのが、警察官僚で、民主党政権時代に内閣情報官に抜擢された北村氏である。公安警察のキャリアを持つ同氏は、11年から約8年にもわたり情報官を務めた。その間に内閣情報調査室(内調)を中央情報機関として定着させ、さらには安倍政権の政治的原動力を活用してインテリジェンス改革を断行したのである。また、北村氏が首相の信任を得たことによって、インテリジェンス・コミュニティーにおける内調の存在感は、極めて大きなものになった。

 北村氏は安倍氏の要望に応える形で、それまで週に1回だった情報官による首相ブリーフィングを週に2回とし、そのうちの1回はインテリジェンス・コミュニティーを構成する、警察庁警備局、防衛省情報本部、外務省国際情報統括官組織、公安調査庁、内閣衛星情報センターなど、それぞれの担当者による首相への直接のブリーフィングという形式をとったのである。この各省庁による首相ブリーフィングのため、定期的に北村氏が中心となって各省庁の情報担当者と会合を持ち、その省庁がどのような情報を首相に報告するのかを調整していたという。

 各省庁からすれば、それまでは内調に情報を上げ、それを間接的に情報官から首相に報告してもらう、という形だったものが、直接首相に報告する機会が与えられることによって、ブリーフィングに対する責任感が増すと同時に、インテリジェンス・コミュニティーの一員であるという自覚も根付いた。

 第二次安倍政権発足から4カ月後、安倍氏は国会において次のように発言している。

 「秘密保護法制については、これは、私は極めて重要な課題だと思っております。海外との情報共有を進めていく、これは、海外とのインテリジェンス・コミュニティーの中において日本はさまざまな情報を手に入れているわけでございますし、また、日米の同盟関係の中においても高度な情報が入ってくるわけでございますが、日本側に、やはり秘密保全に関する法制を整備していないということについて不安を持っている国もあることは事実でございます」

 この発言から安倍氏が、諸外国との情報共有の必要性から秘密保護法制を推進しようとしていたことが理解できる。13年8月には自民党で町村氏を座長とする「党インテリジェンス・秘密保全等検討プロジェクトチーム」が立ち上がり、内調を事務局として法案の作成が行われた。

 ただ、自民党も一枚岩ではなく、法案に反対する声も多く聞かれたという。そうした議員に対して、法案の必要性を説明して回ったのが北村氏であった。そして同年12月6日に「特定秘密の保護に関する法律」が成立している。


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