特定秘密保護法の導入によって各行政機関の機密が特別秘密として管理され、アクセスできるのは大臣政務官以上の特別職の政治家と、適正評価をクリアした各省庁の行政官ということに整理されたため、秘密情報の運用面においては大きな改善が見られる。
クリアランスを持つ行政官は「職務上知る必要性」の原則に基づいて特定秘密にアクセスし、さらに必要があれば「情報共有の必要性」に応じて、他省庁の行政官や上記の政治家と特定秘密を共有するという、欧米諸国では日常的に行われていることが初めて可能となった。また日本と米国、その他友好国との情報共有も進んだのである。
17年9月、河野太郎外務大臣 (当時)は記者会見で北朝鮮情勢について「諸外国から提供された特定秘密に当たる情報も用いて情勢判断が行われたが、特定秘密保護法がなければわが国と共有されなかったものもあった」と評価している。
テロ情報の収集が
平時から可能に
シリアでジャーナリストの後藤健二氏と軍事コンサルタントの湯川遥菜氏がイスラム国(IS)に拘束され、15年1月に殺害の様子を記録した動画がネット上で公開された事件は日本人に衝撃を与えた。
これを受けて同年12月8日、外務省総合外交政策局内に国際テロ情報収集ユニット(CTU-J)が設置された。CTU-Jは平時から海外で情報収集や分析活動を行い、現地の治安情報や邦人が危険に巻き込まれないよう防止するための対外情報組織である。また有事には邦人救出の交渉等も担い、18年10月にはシリアで拘束されていた安田純平氏の解放に尽力している。
NHKの取材によると、CTU-J設置の舞台裏は次のようなものだったそうだ。
「『国際テロ情報収集ユニット』の立ち上げの際、組織の実権をどこが握るかをめぐって、外務省と警察庁の間で激しい攻防があった。結局、最終的には、安倍首相や菅義偉官房長官(当時)と関係の深い、北村内閣情報官が主導権を握り、組織のトップのユニット長は、警察庁出身者から出すことに決まった。このときの外務省の恨みはものすごかった。まさにこの瞬間に、この組織が、外務省に籍を置きながら、官邸直轄の組織となることが決まったと言ってもいい」
CTU-Jはテロ情報に特化した組織であり、外交や経済、安全保障についての情報収集は認められていない。しかし平時に海外で情報を収集し、それを直接官邸に報告できるという点では、対外情報機関としての体裁を整えていると言える。
北村氏は、「人員を拡充し、大量破壊兵器の不拡散や経済安全保障関連での情報収集も担わせることを検討してもいいでしょう」と語っており、将来的には本格的な対外情報機関への脱皮を期待しているようである。08年に公表された方針は、特定秘密保護法とCTU-Jの設置という形で結実したと言える。
日本企業の様子がおかしい。バブル崩壊以降、失敗しないことが〝経営の最優先課題〟になりつつあるかのようだ。しかし、そうこうしているうちに、かつては、追いつけ追い越せまで迫った米国の姿は遠のき、アジアをはじめとした新興国にも追い抜かれようとしている。今こそ、現状維持は最大の経営リスクと肝に銘じてチャレンジし、常識という殻を破る時だ。