2022年12月3日(土)

バイデンのアメリカ

2022年7月7日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。著書に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

 選挙制度、市民権、三権分立……。トランプ前政権以来、米民主主義が根幹から大きく揺らぎ始めている。その背景にあるのが、保守層とリベラル派の深刻な対立だ。「南北戦争の再現」を危惧する声まで出始めている。その現状と今後を2回に分けて解説する。

連邦議事堂乱入・占拠事件はじめ、米国の民主主義を揺るがす事態が起きている(代表撮影/ロイター/アフロ)

同盟国首脳からも飛び交う批判の数々

 「ひどい判決だ。いかなる政府、政治家、個人であれ、女性の体に関して口をさしはさむことは許されない」(ジャスティン・トルドー・カナダ首相)

 「世界中の人たちに、とてつもないインパクトを与えた。自由主義を後退させるものであることは明らかだ」(ボリス・ジョンソン英国首相)

 「私は、最高裁決定で自由を侵害されることになる女性たちへの連帯を表明する」(エマニュエル・マクロン仏大統領)

 保守派が多数を占める米連邦最高裁が先月24日、人工妊娠中絶を憲法上の権利と認めた判決を半世紀ぶりに覆したことについて、国内多数派はもとより、先進諸国の政治指導者たちの間からも、辛辣なコメントがあいついだ。

 外交慣例上、特定の国の内政に関し諸外国の政治家、しかも同盟諸国の首相や大統領が、表立った批判をすることは、異例中の異例だ。

 そのこと自体、ここ数年来、自由主義世界の旗手米国における民主主義の後退ぶりに対する世界の関心が、異常なほど高まりつつあることを示している。

 同時に、国内有力メディアの間でも、今米国で起こりつつある「デモクラシー侵食の動き」(ワシントン・ポスト紙)に対する厳しい監視と警戒を目的とした特別チーム、専門デスクなどの新設、研究機関による「メディア・ガイドブック」作成といった新たな動きが出始めている。

 伝統あるAP通信は先月、「デモクラシー・ニュース担当部長」を新たに任命したことを正式発表するとともに、「各州における投票妨害、デマ情報の拡散、選挙管理委員会に対する威嚇、選挙制度の公平性などを取り扱う専門記者からなる特別チームの陣頭指揮に当たらせる」との方針を明らかにした。

 ワシントン・ポスト紙はすでに昨年来、同様の調査班を編集局内に立ち上げており、とくに、白人至上主義者、保守反動グループによる反社会的行動に対する厳しい監視と精力的報道を続けている。

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