2022年6月26日(日)

デジタル時代の経営・安全保障学

2022年6月15日

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山田敏弘 (やまだ・としひろ)

国際ジャーナリスト

講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版などを経て、米マサチューセッツ工科大学(MIT)の客員研究員として国際情勢やサイバー安全保障の研究・取材活動に従事。著書に『世界のスパイから喰いモノにされる日本』(講談社+α新書)、『死体格差 異状死17万人の衝撃』(新潮社)など。

 イーロン・マスク氏によるTwitter買収劇の幕が開いてから、2カ月以上が経った。今もマスク氏側とTwitter側で、買収をめぐるせめぎ合いが続いている。

 マスク氏は現在、Twitter社がこれまで主張してきた、偽アカウント(ボット)の数がユーザー総数の5%以下であるとの報告を疑い、実際は偽アカウントがもっと多いはずだと指摘している。なぜそんな問題にこだわっているかというと、マスク氏が買収額を設定した段階でのTwitterの報告事実と実態が違っていれば、買収交渉を一時止めて、買収金額をさらに低くすべきと牽制しているからである。第三者的な見方では、偽アカウントは全ユーザー数の13%以上になるとの分析も出ている。

イーロン・マスク氏は何を目論んでいるのだろうか(AP/AFLO)

 ただこうした日々のニュースを追っていると、頻繁にTwitterでコメントを発するマスク氏が、本当に何をしたいのかが見えにくくなる。本稿では、Twitter買収劇だけではない、マスク氏の本当の狙いに迫ってみたい。

「420」に隠された特別な意味

 とはいえ、まずいま最大の関心事は、マスク氏が進めるTwitter買収がどうなるかだろう。実は専門家の中にも、交渉が続いている状況だが、いまだにマスク氏の買収提案に懐疑的な人もいる。

 なぜなら、マスク氏の言動が、予測不能で、Twitterなどでは「おふざけ」発言も少なくないからだ。Twitterの買収についても、昨年11月にTwitterの名物だったジャック・ドーシー最高経営責任者(CEO)が退社することになり、それから密かにTwitter株を買い増していた。だが4月になって突然それが発覚して、大変な騒動になったのは記憶に新しい。

 さらに、Twitterでは「下ネタ」などを含む子供っぽいツイートを頻繁に投稿。そして過去のツイートでは「おふざけ」が冗談で済まなくなったケースもある。2018年にTwitterで「テスラ株を420ドルで非上場するか」とつぶやき、大騒動になったのだ。

 しかもこの「420」という数字には特別な意味があった。マスク氏といえば、米国では合法の州も多いマリファナを愛好していると知られていたが、「420」というのは、米国を中心に世界でマリファナを祝う日となっている4月20日のことを指している。米国ではこの日にマリファナ支持者らのイベントなどが各地で行われる。マスク氏はこの「420」という数字をツイートでも好んで使う。

 テスラ株の非上場を示唆した「420」ツイートは本気でなかったことが結局判明するが、それでも代償は大きかった。マスク氏は当時、市場を混乱させたことで米証券取引所から20億ドルの罰金を課されている。

 そして今回のTwitter買収でも、マスク氏がTwitter買収で提示した株式の買収額は、「54・20ドル」だった。ニューヨーク・タイムズ紙も、Twitter買収額にある「420」という数字が注目されていると指摘している。

 そんなことだから、Twitter買収はマスク氏の「おふざけ」だと指摘する声があがったのは無理もない。米メディアでもマスク氏はなんだか「怪しい」と見る向きもあるのだ。

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