2022年10月1日(土)

社会の「困った」に寄り添う行動経済学

2022年7月20日

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佐々木周作 (ささき・しゅうさく)

大阪大学感染症総合教育研究拠点特任准教授

大阪大学感染症総合教育研究拠点特任准教授。博士(経済学、大阪大学)。専門は行動経済学・実験経済学。三菱東京UFJ銀行・京都大学特定講師、東北学院大学経済学部准教授を経て現職。一般向け書籍に『今日から使える行動経済学』(ナツメ社)等がある。

[著書]

佐々木先生:マヂカルラブリー野田クリスタルさんと餅つきの打ち合わせをしたときに、「大人が汗をかいて、頑張っている様子が想像できる。これだけ頑張ってくれているのだから、投票に行ってみようと思うんじゃないか」と仰っていたのが印象的でした。餅つきには、相手の親切に対して自分も親切に対応する「互恵性」が働くのかもしれません。

選挙当日、投票済証と餅を交換できる
餅つきイベントを開催

(出所)日本放送協会(NHK)

今氏さん:佐々木さんは、餅つきやプリクラへの参加を呼びかけるチラシに「いつ食べるか」「どちらのフレームで撮影するか」を聞く二択のクイズを追加されましたね。

「選挙×プリクラ」の勧誘チラシに、
2択クイズをナッジとして追加した

(出所)日本放送協会(NHK)

佐々木先生:これは「コミットメント」というナッジです。餅つきやプリクラに興味を持った人に、餅つきに行く経路や時間帯、プリクラ機でフレームを選んでいる様子を具体的に想像してもらうことで、行きたい気持ちを強めて参加までつなげる効果を期待しました。

 芸人やギャルの方々からは他にもアイデアが出ていたと思うのですが、どんな基準で餅つきやプリクラに絞り込んだのですか?

今氏さん:「真似しやすいかどうか」は大事なポイントでした。餅つきは、臼と杵があればさまざまな場所で開催できます。実際に「やってみたい」という地域や企業が出てきており、今後の選挙での実現を目指しています。

 ギャル考案のプリクラ×マニフェストは、奇抜に見えますが、一定層の人たちが興味を持つイベントを開いて気軽に参加してもらいつつ、その人たちに合った表現形式で選挙に関する情報を提供するという二段構えの工夫は、いろいろと応用できると思っています。

佐々木先生:そのポイントは、「スケーラブル(拡張可能)か」と言い換えることができますね。よいアイデアを人々の自律性を尊重しながら広めるには、真似したいと思えるかどうかという点はとても重要です。

 スケール(拡張)するときには失敗することもあると思います。今回のアイデアにも、効果が期待できる側面と今後改善が必要な側面が混在しています。失敗もポジティブに捉えて試行錯誤する姿勢が、番組を通じて、社会に広まってほしいと感じます。

 ひとくちメモ   「ナッジの効果」
 ナッジの効果は、地域や文化などのさまざまな要因によって変化する。効果の出方が、ナッジを受け取る人たちの価値観や好みに依存する部分が大きいからだ。
 海外の先行事例が、日本でも同様に有効かどうかは分からない。小規模なテストで、どんな調整を加えたら効果が高まるのかを事前に確かめることが重要だ。
※筆者の連載「社会の『困った』に寄り添う行動経済学」は、WEB版で詳しくご覧いただけます
 
 
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