2022年12月10日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年8月23日

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世界情勢としても重要なイラクの状況

 この混迷が暴力の行使につながるか、話し合いで収拾されるのか、よく分からない。

 そもそも民主主義は話し合いで妥協していくことを必要とするが、イラクではこれが機能していない。昨年10月の戦挙でサドル派が議会の最大多数を得たが、首相を誰にするかの問題で話し合いがつかず、結局サドル派議員が議員辞職、サドル派以外のシーア派が「連合枠組み」を結成し、スダニを首相に指名した。しかしサドル派がこれに反発して、現在の状況が出てきている。

 サドルが権力分有に伴う腐敗やイランのイラクへの影響力増大を問題にするのは理解できる面もあるが、それを実現するために議会占拠を行うのは行き過ぎであろう。サドル派は国会解散、総選挙、さらに連邦判事の交代を求め、「要求が通るまで居座る」と主張している。これに対し、イラクの司法部門を統括する最高司法評議会は8月14日、国会解散を「権限がない」として拒否する声明を出した。

 イラクは中東において重要な国である。イラクは石油輸出国機構(OPEC)での第2の産油国であり、その産出量は日474万バレルに達し、アラブ首長国連邦の日産400万バレルを上回る。

 その上、アラブの国としてイランに対峙する地政学的に重要な位置を占めている。イラクがイランとの関係をどうしていくかはアラブとイランとの関係に大きな影響を持つように思われる。シーア派、スンニ派の宗派対立がよく指摘されるが、それよりも、アラブとペルシアの民族的対立の方が根深いようにも見える。

 上記解説記事によれば、サドルが妥協に応じる可能性もあると言う。暴力の応酬にならないことを希望するしかないが、イラクの状況は注視に値する。

  
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