2022年10月6日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年8月23日

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 イラクでは、昨年10月の選挙以来、政府は形成されていない。シーア派の有力者サドル師の一派が最大の議席を得たが、他党と首相選出について合意できずに来た。

 イラク政治は、サドルの支持者がシーア派、スンニ派、クルドの権力分有体制を批判し、それにつながる腐敗を糾弾して、7月27日に議会占拠の挙に出たことに端を発し、混迷を深めている。7月30日にもサドル派による数百人規模での議会の占拠があった。

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 サドルは支持者による議会占拠を受け、イラクの憲法と選挙の手続きの変更を求め、「連合枠組」との対決を深めた。サドルは声明で議会占拠は「革命」であり、「政治過程の急進的な変更の機会」であると述べる一方、グリーンゾーン(バグダッドの中央政府地域)に集まった数百人の支持者に自制を呼びかけ、暴力には至っていない。

 ウォールストリート・ジャーナル紙の7月31日付け解説記事‘Iraqi Cleric Calls for Constitution, Election Changes, Deepening Political Crisis’は、イラク政治の混迷につき、以下の諸点を指摘する。

・昨年10月の総選挙後の交渉で首相選出に失敗したサドルは、自らを支持する議員たちに辞職するように命じ、その結果、シーア派のライバルでイランを支持する「連合枠組」が最大の議席数を持つに至った。それで7月25日、首相に前閣僚のスダニが指名された。これを受け、スダニ政権の誕生になることを阻止すべくサドル支持者が議会を占拠した

・サドルは7月31日、憲法と選挙手続きをどう変更するかは言わなかったが、過去に、シーア派、スンニ派、クルドの党が省庁や政府のポストを分け合う2003年以降の割当制をやめることを過去に呼びかけたことがある。この提案は、利権の配分、後援ネットワーク、富と影響力配分システムの破壊になると恐れるライバルからの強烈な反対に遭った。

・サドルの支持者も、今のシステムで彼らに割り当てられた省庁で職を得るなど利益を得てきた。サドルはまたイランと近しい関係をもっており、イラクへのイランの影響力排除をどこまで進められるか、疑問視される。

・専門家は、選挙法の完全な改正や憲法(昨年10月の選挙の前には主要なシーア派、スンニ派、クルドの政治団体に権力と主要ポストを与え、省庁を分け合うことを可能にしていた)の改正をサドルができるとは考えないとして、サドルは「最大限の要求」をしているが、それよりずっと小さなもの、おそらく新しい選挙さえ含まぬもので妥協する可能性があると指摘している。 

・7月31日のインタビューで「連合枠組」のファトラウイ議員は、サドルのイラク政治の大胆な改革の呼びかけは通らないだろうと述べている。他方、クルドの政党「新世代」のワヒッド代表は、憲法と選挙法改正のサドルの抗議にクルドも加わるように呼び掛けている。しかし、ワヒッドは孤立した政治家で、サドルの抗議に沈黙している他のクルドの主要政党とは連携していない。

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