2022年7月2日(土)

中島厚志が読み解く「激動の経済」

2013年4月30日

»著者プロフィール
著者
閉じる

中島厚志 (なかじま・あつし)

新潟県立大学国際経済学部教授

1952年生まれ。東京大学法学部卒。日本興業銀行入行。パリ興銀社長、みずほ総合研究所チーフエコノミスト、経済産業研究所理事長などを経て2020年4月から現職。主な著書に『大過剰 ヒト・モノ・カネ・エネルギーが世界を飲み込む』(日本経済新聞出版社)。
 

(図表4)輸出入対GDP比
拡大画像表示

 現に、日本の貿易の対GDP比は世界最下位クラスであり、他国に比べて世界経済との関係は薄いと見ざるを得ない。日本の輸出対GDP比は世界155か国中第145位だし、輸入対GDP比に至っては155か国中153番目の低位だ(図表4)。

 TPPは、この状況を改善する。高率関税の撤廃などでとりわけ消費者利得が大きいことは際立った魅力だが、低成長に甘んじる日本経済が成長を続ける世界経済を一層取り込めるメリットも大きい。

 さらに、日本の市場や企業が国際競争にさらされることで、国内産業の競争力が磨かれる効果もある。当研究所の分析でも、外資系企業の国内参入は国内雇用を増やすだけではなく、高い生産性等で日本経済や同業種の日本企業などにプラスの影響をもたらしている(RIETIディスカッションペーパー11-J-034等)。

 逆に、ブラジルのように、海外企業から国内産業を守ることが国家財政破綻の要因にまでなった国もある。ブラジルでは、1950年代から70年代にかけて輸入代替工業化政策が採られ、輸入規制や補助金などで国内産業が保護された。しかし、その結果企業の多くが競争力を失い、貿易収支や財政収支の悪化から80年代の財政破綻にもつながってしまった。

消費者目線でも見なければならない

 例外を認めない自由貿易協定であればあるほど、競争力が十分ではない産業への打撃は大きい。とくに失ってはならない農業については、生産力維持と競争力強化に向けた大胆なテコ入れ策が欠かせず、国民負担が増えることも避けられない。

 しかし、他方で、苦しくても、TPP等主要な国々と自由貿易協定を結んで国際競争の中で頑張ることが、消費者にプラスになるだけではなく将来の豊かさにもつながる。

 むしろ、TPP交渉への参加が決まったからには、今後TPPや日中韓FTA、日EU・EPAを、国内の既得権益や合理性が乏しくなった規制・慣行などを見直すテコとすることが必要だ。それが、一層大きな消費者利得を生み、日本経済の活性化にもつながっていく。

 抜本的な関税・非関税障壁撤廃を迫るTPP等を、輸出増や国内産業保護といった供給者目線だけで捉えてはならない。もちろん、産業競争力強化といった視点は欠かせないが、あわせて消費者利益といった消費者目線でも捉え、TPP等を需給バランスが取れた日本経済構築のテコとすることが大事だ。


「WEDGE Infinity」のメルマガを受け取る(=isMedia会員登録)
「最新記事」や「編集部のおすすめ記事」等、旬な情報をお届けいたします。

編集部おすすめの関連記事

関連記事

新着記事

»もっと見る