2022年7月2日(土)

中島厚志が読み解く「激動の経済」

2013年4月30日

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中島厚志 (なかじま・あつし)

新潟県立大学国際経済学部教授

1952年生まれ。東京大学法学部卒。日本興業銀行入行。パリ興銀社長、みずほ総合研究所チーフエコノミスト、経済産業研究所理事長などを経て2020年4月から現職。主な著書に『大過剰 ヒト・モノ・カネ・エネルギーが世界を飲み込む』(日本経済新聞出版社)。
 

 いずれにしろ、政府試算では、TPPに参加することでの最大の受益者は輸出企業ではなく、消費者となっている。TPPがもたらす経済効果は、消費(GDPを0.61%押し上げ)が輸出(同0.55%押し上げ)を超えて最も大きいとの結果だ。

高い日本のエンゲル係数

(図表2)家計支出割合
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 TPP参加で消費者が一番利得を得るということは、現在日本の消費者が高率の輸入関税などで高価格となっている食料を買っていることの裏返しでもある。

 日本の家計消費支出のうち飲食費に回る割合(エンゲル係数)は主要国の中では高い方にある(図表2)。多くの欧米主要国のエンゲル係数が14~18%程度にある一方、日本は23%となっている。

 確かに、主要国間の主要農産品の小売価格(ドルベース)をみると、日本が総じて高い(図表3)。しかも、輸入関税率の高い農産物ほど内外価格差が大きい傾向にもある。ちなみに、基本的な関税率は米で568.4%~777.7%、牛肉で38.5%と高い一方、リンゴは20%、ジャガイモは5%と低い。

(図表3)主要食料品小売価格
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 もちろん、高いエンゲル係数の全てが高率の輸入関税によるものとは言えず、安全高品質の食材を求める日本人の要求水準の高さなども影響している。だから、TPPに参加したからといって、食料品の内外価格差が完全になくなることは考えにくい。

 しかし、農産物価格の下落にくわえて外食費が安くなることなども勘案し、TPP参加で日本政府試算のように農産物貿易自由化が図られるとすると、日本の家計の飲食費支出は最大で1割程度下がるとも試算できる。これは、家計のやり繰りが厳しい現状、多くの世帯にとって恩恵だ。

産業競争力が磨かれる

 国内で少子高齢化と人口減少が進む中で、このままでは経済成長はなかなか高まらない。しかも、日本経済の海外経済の取り込み力が小さいとなればなおさらだ。

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