2024年12月27日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年5月16日

 台湾が民主主義に自信を持つまでには時間がかかりました。2008年に選挙で国民党が勝ったときは、何時中国が台湾併合に乗り出すかが関心の的でした。北京オリンピックが終わるまでは国際世論を刺激することはしないだろう、それが済むと、上海万博が終わるまでは、などと言う観測が飛び交い、皆、戦々恐々として、中国の動向を注視していました。しかし、何事も起こらないうちに、第一期国民党政権は終わりました。

 その間国民党政権は重要な教訓を学んだのです。中国との経済接近については反対はありませんでしたが、公約だった政治協定を結ぼうとすると世論の反発が強く、次の諸選挙に影響を与えることが明白となりました。また、反日的態度は、すぐに民衆の反発を買い、次の選挙に不利に働くことも分かって来ました。つまり台湾人の真意が奈辺にあるかが分かって来て、中国による武力行使のチャンスが訪れない状況においては、台湾の民主制度の下では、台湾人の意向を尊重しない限り政権を維持できないことが分かって来たのです。

 李登輝氏が、独立より民主に重点を置いたことについては、急進独立派からは批判がありました。しかし、今となっては、それが正攻法だったと言えるでしょう。そんなことをしているうちに中国からの武力行使があれば間に合わないという惧れは常にありましたが、それが杞憂であったことは今や明らかです。中国は、やはり米国との間の力の差を認識して、当面武力に訴える意図が無いであろう、ということも分かって来ました。

 将来についても、台湾が、自由民主主義を護ることが王道でしょう。

 自由を守るということは、台湾の国内政治において、中国からの金や政治的圧力による、メディアの親中偏向を是正することにもつながります。すなわち、言論の自由の達成は、台湾の自主独立の達成に寄与することになるでしょう。

 より、重大なことは、台湾の独立は、米国議会によって護られているという現実です。米行政府が時として親中の方向に独走しても、米国には議会という歯止めがあります。台湾関係法はその最たるものですが、1998年のクリントン大統領訪中の際の「三つのノー」表明(「二つの中国」「一中一台」を支持しない、台湾の独立を支持しない、台湾の国際機関への加盟を支持しない)に対しては、クリントンの帰国直後、議会がほとんど満場一致で反対を表明しています。そして、米国議会は、台湾が自由民主主義国家であるからこそ、共産党一党独裁国家に制圧されることに断固反対しているのです。

 つまり、台湾の自由民主主義を達成するということは、台湾の独立を守るということなのです。

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