3月8日付ウェブ米Foreign Policy誌にて、Willy Lam香港中文大学教授が、中国の全人代で任命される国務委員、外相、駐米大使という新しい3人の外交プロ達は、形式的には、中国の外交姿勢を柔軟な方向に変えて行くかもしれないが、実質的な外交の中身は変わらないだろう、と述べています。
すなわち、米国がアジアに軸足を移して、中国の台頭に備えつつあるのに対応して、中国は新しい外交上の布陣を整え、これに取り組もうとしている。全人代は楊潔箎、王毅、崔天凱の3人の昇進を決めることとなろう。
楊はこれまで5年間にわたって外相を務めたが、元駐米大使であり、今度は国務委員(副首相より一段だけ下のランク)として高所から全般的な戦略に取り組むこととなる。崔は元駐日大使、現在は北米関係を主管する次官であるが、今度は駐米大使になる。王毅は元駐日大使、現在は台湾工作弁事処代表(「国台弁」)、今度は外相に昇進する。
これら3人の外交のプロたちは強硬な威圧的対応よりも交渉を重視すると見られている。しかし、他方彼らの任命が、近隣諸国との間の主権に関係する問題処理において、中国の攻撃的政策を変えるという見通しには結び付かない。
中国においては、外交・安全保障に関する政策は外交部によって立案されるのではなく、共産党中央指導小組(党総書記である習近平が主催)によって立案される。そこには、外交部、軍、国家安全部、エネルギー、通商担当部局など各省庁の代表が含まれている。
最近、習近平は胡錦濤時代よりも軍将官たちにより大きな発言権を与えつつある、というのが共産党筋の見方である。軍将官のかなり多くの者が、「太子党」の仲間たちである。
長年、米国との関係に携わってきた楊は、米国でのロビー活動に力を入れたり、イデオロギーよりも経済関係を重視したりするだろうと見られている。
王毅については、小泉内閣から第一次安倍内閣に変わったとき、「戦略的互恵関係」なる表現をつくる上で功績のあった人物の一人として知られている。また、5年間の対台湾政策を総じて無難にこなしたのが今回の昇進の背景にあるのだろう、と述べています。
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上記、3人の外交プロたちをキー・ポストに任命することに関するラムの見解は、現実的なものと思われます。つまり、3人の交代は中国外交のスタイルにおける幾分かの柔軟性をもたらすかもしれないが、実態面では、ほとんど変わらないだろう、と見るものです。