2024年11月22日(金)

Wedge REPORT

2022年11月25日

 それでも、同年のメキシコオリンピックで日本がサッカーで銅メダルを獲得したのを追い風に71年8月、大阪・梅田で第一号店舗を開業。当時は珍しかった海外の試合映像を店内で流して、来店者を増やした。

世界でも珍しいチェーン展開に

 その後、1980年代、日本でのサッカー人気は徐々に高まりをみせた。日本で開催していた欧州と南米のクラブチーム世界一を決める「トヨタカップ」では、毎年国立競技場が満員になった。「世界の魅力を日本に伝え続け、サッカー人気を底支えしてくれてきた」と蔵並氏は振り返る。

 こうした中で1993年のJリーグ開幕を迎えた訳だが、そこからの道のりも平坦ではなかった。「Jリーグ発足による爆発的な人気は、2年で終わった」と蔵並氏。華々しい開幕から少しずつ話題性が無くなっていき、バブル崩壊の影響もあり、スタジアムの客足は遠のいた。レプリカユニフォームの在庫が積みあがった。

 それでも同社はサッカーを愛するサポーターや高みを目指す選手たちに最高のサッカー用品を提供し続けた。2002年の日韓大会での盛り上がり、先に触れた日本代表の闘いやコロナ禍でのJリーグクラブとの関係強化など、良い時も悪い時もサッカーと共に生きてきた。「僕らはW杯のある4年に一度、サッカーを応援しているわけじゃないから」と蔵並氏。

 実際、同社のサッカーショップKAMO原宿店には、ラモス瑠偉氏やロベルト・バッジョ氏、デイヴィッド・ベッカム氏、クリスチアーノ・ロナウド氏はじめ国内外の歴代名選手らのユニフォームやシューズなど歴史を感じさせる品が展示されている。

 今では、全国に19店舗を構える。サッカー専門のスポーツ用品店としてチェーン展開している企業は世界的にも少ないという。

日本人が持つようになってきたこだわり

 こうした歴史とともに、日本人のサッカー用品への向き合い方は変わってきた。蔵並氏が感じるのは「こだわりの強さ」だという。

 「日本人はそもそも自分の足の幅に合うか、履いてみて動きやすいかなど、フィッティングへのこだわりが強い。また、ヨーロッパと違い、日本のサッカーグラウンドは天然芝や人工芝、土とさまざま。普段プレーするグラウンドに合う靴を選んでいる」と指摘する。

 かつてサッカーシューズを選ぶ時の基準は、憧れのトップ選手が履いているかといったものだったが、必ずしもそのようではなくなってきている。インターネットなど情報環境の充実により、自ら多くの情報を得て、プレー環境に合った商品を選ぶようになっているのだ。「各店舗の販売員にも、どれくらいの頻度でプレーをするのか、どんなグラウンドで練習や試合をしているのか、子どもの場合は足が大きくなっている途中なのか、といったことを聞きながらお客それぞれに合う商品をお勧めしている」と蔵並氏は話す。


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