2024年6月16日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年12月1日

 また、両国はPKKその他すべてのテロ組織、これに繋がる組織や個人の活動を阻止することにコミットする、と書かれている。しかし、YPG/PYDがテロ組織であると両国が認める表現は辛うじて避けられている。

エルドアンはどんな手を打つのか

 スウェーデンではクルドの政治家とは公に接触が維持されてきた。前政権の外相や国防相がYPG/PYDのメンバーと会見した事実がある。しかし、この記事にある「これらの組織とPKKの間にはあまりに密接な関係があり‐‐‐‐われわれとトルコとの関係にとっては好ましくない」との新政権の外相の発言は、YPG/PYDとPKKは一体だとのトルコの主張に歩み寄るものに他ならず、新政権はYPG/PYDと距離を置くということであるから、少なくともこれらクルド人の組織とは接触を控えるということであろう。

 11月8日、クリステションはトルコを訪問しエルドアンと会談したが、彼はスウェーデンが今後より厳しくテロに対応することを伝えた模様である。しかし、エルドアンは11月末までにスウェーデンがメモランダムのコミットメントを完全に履行するよう更なる行動を要求した。

 最も際どいのは、メモランダムには「(両国は)懸案のトルコによるテロ容疑者の国外追放あるいは本国送還の要請に迅速かつ完全に対応する」と書かれていることである。共同記者会見において、エルドアンは、あるジャーナリストを名指しし、米国に居住するギュレン師(2016年のクーデタ未遂事件の黒幕だとエルドアンは主張している)のネットワークに属していると主張して、彼が送還されることは非常に重要だと述べた。

 どこでエルドアンが手を打つのかは見通せない。目一杯の要求を貫こうとする恐れはあろう。一方、スウェーデンに在住のクルド人の多くは政治的迫害を理由に難民として受け入れられたようであり、多くは既にスウェーデン国民である。NATO加盟という国家目標はあるが、人道主義を掲げるスウェーデンがクルド人の人権擁護のための要請との板挟みとなり、国内政治的にも困難な選択を強いられる場面があるのではないかと思われる。

   
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