2022年12月3日(土)

教養としての中東情勢

2022年7月3日

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 ロシアのウクライナ侵攻を受けて開かれた北大西洋条約機構(NATO)首脳会議は6月29日、フィンランド、スウェーデンの加盟を承認することで合意、欧州の安全保障地図は劇的に変わることとなった。2カ国の加盟に反対していたトルコのエルドアン大統領に、クルド人問題などで譲歩を与えた末の決着で、同氏の面目躍如といったところだ。舞台裏の同氏の駆け引きを探った。

トルコのエルドアン大統領(中央)が2カ国の加盟に反対し、要求を引き出した形だ(ロイター/アフロ)

「欧州はエルドアンにひれ伏した」

 エルドアン大統領は今回の結果について「トルコとトルコ国民の外交的勝利」と自賛。大統領府も「求めていたものを手に入れた」とのコメントを発表した。政府系メディアは「エルドアンが机を叩き、欧州がひれ伏した」などと指摘、米欧に真っ向から要求を突き付けた大統領の決意とビジョンを称えた。

 エルドアン政権が自画自賛するほどの成果とは何なのか。トルコが北欧2カ国の加盟に反対していた理由は公式には2つだ。1つはフィンランドとスウェーデンが、トルコがテロ組織として掃討作戦を進める反体制組織「クルド労働者党」(PKK)や、PKKと関係の深いシリアのクルド勢力を支援していることだった。

 2つ目はトルコが2019年にシリア北部に侵攻した際、両国がトルコへの武器禁輸の発動に加わったことだ。エルドアン大統領は「トルコに制裁を科すような人々の加盟に賛成することはできない」などと両国の加盟を認めない理由を挙げていた。

 今回、トルコの反対理由は除去されたのだろうか。NATO首脳会議直前にトルコとフィンランド、スウェーデンの2カ国が合意した覚書では、2カ国がPKKなどへの支援の停止や、一部クルド人の送還に「対処」することを約束した。トルコへの武器禁輸の解除も盛り込まれた。エルドアン氏の要求が基本的には受け入れられた形になっており、「人権重視を掲げる2国がトルコの脅迫に屈した」(専門家)という批判が強い。

 エルドアン氏が今回の外交的成果を国内に喧伝し、来年6月の大統領選挙に圧勝するというシナリオを描いているのは間違いない。実際、経済の低迷で落ちていた支持率に回復傾向が見られるのも事実だ。

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