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WEDGE REPORT

2022年6月28日

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樫山幸夫 (かしやま・ゆきお)

元産經新聞論説委員長

元産經新聞論説委員長。政治部で中曽根首相番、竹下幹事長番、霞クラブ(外務省)詰め、ワシントン特派員、同支局長、外信部次長、編集局次長、正論調査室長兼論説委員、産経新聞社監査役を歴任。2度のワシントン勤務時代は、ホワイトハウス、国務省などを担当、米国の内政、外交など幅広く取材した。

 ウクライナ情勢をめぐって、現地で情報収集などにあたっている松田邦紀大使は、ゼレンスキー大統領らが各国に強く供与を要請していた重火器の前線配備が、先週末までに完了したことを明らかにした。戦局挽回に不可欠ともいうべき強力な〝援軍〟であり、これらの投入によって攻勢にさらされている東部での反撃態勢が整ってきた。

各国からの供与により、ウクライナの反撃態勢は整いつつある(AP/アフロ)

 供与されたのは、米国から高機動ロケット砲システム(HIMARS)、ドイツ提供の155ミリ自走榴弾(りゅうだん)砲など。より長距離の攻撃が可能となるが、松田大使によると、ウクライナ軍高官は、これら火砲が力を発揮、すでに効果をあげ始めたと説明している。

 ゼレンスキー大統領らウクライナ側は、重火器の数、規模においてロシアより著しく劣勢を強いられているとして、米国はじめ西側に矢の催促、供与の遅れに焦りと不満を隠していなかった。重火器配備と時期を同じくして、東部ルハンスク州の要衝、セベロドネツクをロシア側が制圧したと伝えられたが、大使は、次の作戦を行うためにウクライナ軍が「組織的、戦術的」退却した可能性があるとの米国側の見方を紹介した。

経済制裁は精密兵器製造に打撃か

松田邦紀(まつだ・くにのり)東京大学教養学部、米国防省語学専門学校ロシア語学部を卒業し、外務省入省。駐露大使館参事官、ロシア課長、香港総領事、パキスタン大使などを経て、2021年10月から現職。

 ウクライナが、今後、徹底抗戦を貫き、持ちこたえられるかどうかについて松田大使は、「各国による強力な対露制裁の維持・強化、ウクライナへの軍事、財政支援の継続がカギになる」と指摘。欧州連合(EU)が「加盟候補国」の地位を与えたことの意義、重要性に言及した。

 一方、西側による対露制裁は確実に効果をあげ、その結果、ロシアにおけるミサイルなど精密兵器に加え、半導体、先端技術製品、部品などの生産に打撃が出ているという。ロシアの経済専門家も悲観的な見通しを隠さず、最大手銀行ズベルバンクの総裁はロシア経済が2021年レベルに回復するまで10年以上がかかると予測している。

和平交渉「ウクライナの意志を無視するな」

 中断している和平交渉再開の見通しは立っていないが、今後の戦局次第では夏の終わりごろまでには、ウクライナに有利な立場で再開にこぎつける可能性もあるという。ロシアに強硬姿勢をやわらげる姿勢がみられないと前置きしながら、大使は「国際社会がウクライナの意志を無視して、その将来を決めるようなことをすべきではない」と強調した。

 この発言は、欧州の一部がウクライナに不利な和平構想で停戦を急ごうとしていることを念頭に、〝大国の論理〟によってウクライナを見殺しにすることがあってはならないとの警告とみられる。和平実現を待たずにウクライナ復興に向けた動きも始まっているが、第2次大戦後の自らの再建、イラクなど各国紛争後の支援などで日本がもつノウハウへの期待が高く、ウクライナ政府が発足させた「復興評議会」には、すでに日本人専門家も参加しているという。

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