ロシアによるウクライナ侵攻から4カ月、戦闘はいっそう激しさを増している。
現地で情報収集、在留邦人の保護などに当たっている松田邦紀駐ウクライナ大使によると、4カ月にわたる戦闘でウクライナのインフラは100兆円を超える壊滅的な打撃をうけた。ロシアの損害も激しく、戦死者は3万人を超える可能性があるという。
こうしたなかで、ウクライナ市民は依然高い士気を保ち、国外、国内の他地域に逃れていた多数の避難民が続々、元の家に帰還している。
松田大使による現地レポートを2回にわたってお伝えする。
700キロまで拡大する戦線
松田大使によると、4月中旬から始まった東部ドンバス地方に対するロシアの攻勢によって、戦線が北東部ハルキウから南東部のへルソンにかけて700キロメートルの長きに伸びている。
ドンバスのルハンスク州セヴェロドネツク市、リシチャンスク市の近郊で過去数週間、激戦が続き両軍に大きな被害が出ている。ロシア側は東部で一定の戦果をあげているとはいえ、戦争全体としてみれば、戦略的に敗北したという分析もなされている。
大使は、今後の帰趨を占うことは困難としているが、北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は、NATO仕様の兵器が投入されれば、激戦地のドンパスからロシアを掃討することは可能と予測しているという。
ウクライナ軍によると、ロシアの戦死者は6月中旬までに3万3600人にのぼる。それより1カ月早い5月下旬の段階での英国の推計では1万5000人、9年間続いたアフガニスタン戦争でロシアが失った兵士の生命に匹敵する多数にのぼっている。
プーチン大統領が、苦しい戦局を打開するために、核を含む大量破壊兵器を使用するのではないかと取りざたされていることについて松田大使は、「日本は唯一の戦争被爆国であり、そうした暴挙を許すことはできず、主要7カ国(G7)などと連携して、絶対に阻止しなければならない」と強調した。