2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年5月10日

 4月21日付のProject Syndicateで、カール・ビルト元スウェーデン首相が、スウェーデンとフィンランドの北大西洋条約機構(NATO)加盟が確実視されること、そのことが北欧全体の防衛能力を強化することを論ずるとともに、ロシアを挑発することは避けるべきことを指摘している。

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 ロシアのウクライナ侵攻は、スウェーデンとフィンランドの安全保障環境を劇的に変更することとなった。近い将来、両国がNATO加盟を申請することは間違いない。

 NATO加盟の国内の議論は、フィンランドが先行した。スウェーデンで議論に火が付くのが遅れた要因には、社会民主党(中道左派)があるようである。同党は現在の少数単独政権を率いているが、NATO加盟に反対であり、ナポレオン戦争の時代以来、200年の中立のイデオロギーに染まっている事情がある。

 しかし、社会民主党寄りとされる新聞Aftonbladetが4月20日付の社説で、NATO加盟を推奨することに方向転換したことが注目されている。3月には、NATO加盟は北欧地域の安全を「更に不安定化する」とアンデション首相が発言したこともあったが、既に党内論議は始まっており、5月末までには何らかの結論に至ると予想されている。

 このアンデション首相の発言には、穏健党(中道右派・野党第一党)のクリステルソン党首が厳しく批判しており、スウェーデンとフィンランドは協調してNATO加盟の決定を行うべきことを主張した。なお、論説の筆者カール・ビルトはかつて穏健党を率いて首相を務めた。

 世論調査は、NATO支持が着実に拡大していることを示している。1月には、ウクライナへの脅威は既に高まっていたが、NATO加盟に対する賛否は拮抗していた。しかし、Aftonbladet が4月20日に公表した世論調査によれば、賛成:57%、反対:21%、未定:22%であり、明確な多数が賛成するに至った。社会民主党支持者においても、賛成:41%、反対:25%となり、初めて賛成が反対を上回った。


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