世界の記述

2022年4月24日

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宮下洋一 (みやした・よういち)

ジャーナリスト

在欧ジャーナリスト。1976年生まれ。スペイン・バルセロナ大学大学院でジャーナリズム修士。『卵子探しています』(小学館)で小学館ノンフィクション大賞優秀賞。『安楽死を遂げるまで』(同)で講談社ノンフィクション賞を受賞。近著に『ルポ・外国人ぎらい』(PHP新書)がある。
 

ウクライナでは18~60歳の男性の出国を禁じる「国民総動員令」が発令されている (AFP/JIJI)

 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は4月6日、ロシアのウクライナ侵攻によるウクライナ難民の数が430万人を超えたと公表した。隣国ポーランドには、最多250万人が流入している。戦後最大の難民大移動になった。ウクライナ国民の10人に1人が亡命したといわれる。欧州連合(EU)加盟国は、労働を含む滞在許可証の発行を始め、居住地や医療へのアクセスの許可も急いでいる。

 ドイツとポーランド両国の内務相は3月28日、EU委員会に対し、加盟国の積極的な難民受け入れを要求。難民1人につき、一律1000ユーロ(約13万5000円)を給付するよう呼び掛けた。ヨハンソン欧州委員内務担当は、「ポーランドに集まるウクライナ難民の申請を各国が引き受けなければ、現状維持は不可能だ」と示唆。現段階で加盟各国は、1万4500人の受け入れを認めている。

 ポーランドに次ぐ難民の受け入れ国は、ルーマニア(66万人)、ハンガリー(40万人)、モルドバ(40万人)と続く(4月6日時点)。

 EUは現状、難民の受け入れ措置を各国に委ねているが、将来的にはEUの大規模システム管理局(eu-LISA)を通し、欧州域内での情報共有を検討している。

 しかし、このようなEUや加盟国が取り組む政策の裏で、難民は数々の困難や危機に直面している。

 ウクライナとの国境沿いで難民支援を行う団体は、古着やスキー用品などの支援物資は集まるが、「緊急必需品でない」と嘆く。支援団体の活動家らは、難民が求める品は「充電器類、生理用品、コーヒーメーカーなど」と訴える。

 ドイツ赤十字社のディーター・シュルツ広報官は、紛争地での訓練経験がない医師の参加希望が多く、「未経験では現地に送れない」との厳しさを語った。

 このほか、難民を利用した犯罪も浮き彫りになってきた。4月1日付のスペイン主要紙『エル・パイス』によると、同国在住のウクライナ人男性が人身売買目的で、未成年のウクライナ人女性2人をスペインに入国させた疑いで逮捕されたと報じた。国際移住機関(IOM)のホルヘ・ガリンド報道官は、「将来が見えず、行き先も分からない人々は、空約束の労働の餌食になってしまう」とトルコ国営放送局の取材に答えている。

 ウクライナが安定するまで、EUはしばらく試練を覚悟する必要がありそうだ。

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■プーチンによる戦争に世界は決して屈しない
Part 1 元NATO軍最高司令官に聞く 世界の行方と日本の役割/ジェイムズ・スタヴリディス
Part 2 〝プーチンの戦争〟の先にはどんな「出口」が待っているのか?/小泉 悠
Part 3 ロシアの行動を注視する中国 日本の安全保障「再構築」を/小谷哲男
Part 4 日米で「核の傘」信頼性強化を 立ち止まっている猶予はない/神保 謙
Part 5 東欧が見てきたロシアの本性 〝最前線〟の日本は何を学ぶか/マチケナイテ・ヴィダ
Part 6 一変したエネルギー安全保障 危惧される「石油危機」の再来/小山 堅
Part 7 脱ロシアで足並み揃わぬEU エネルギー調達の要諦とは/山本隆三
Part 8 「戦争と制裁」で視界不良は長期化 世界はインフレの時代へ/倉都康行
COLUMN 輸出入停止、撤退・・・・・・ 北海道・ロシア交流は厳冬へ/吉村慎司
Part 9 座談会 「明日は我が身」のハイブリッド戦 日本も平時から備えよ
山田敏弘 ×桒原響子×小谷 賢×大澤 淳
Part 10 真実分からぬ報道のジレンマ「あいまいさ」に耐える力を/佐藤卓己
Part 11 失敗した英国の宥和政策 現代と重なる第二次大戦前夜/細谷雄一

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Wedge 2022年5月号より
プーチンによる戦争に 世界は決して屈しない
プーチンによる戦争に 世界は決して屈しない

ロシアのウクライナ侵攻は長期戦の様相を呈し始め、ロシア軍による市民の虐殺も明らかになった。日本を含めた世界はロシアとの対峙を覚悟し、経済制裁をいっそう強めつつある。

もはや「戦前」には戻れない。安全保障、エネルギー、経済……不可逆の変化と向き合わねばならない。これ以上、戦火を広げないために、世界は、そして日本は何をすべきなのか。

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