2022年10月6日(木)

世界の記述

2022年4月13日

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宮下洋一 (みやした・よういち)

ジャーナリスト

在欧ジャーナリスト。1976年生まれ。スペイン・バルセロナ大学大学院でジャーナリズム修士。『卵子探しています』(小学館)で小学館ノンフィクション大賞優秀賞。『安楽死を遂げるまで』(同)で講談社ノンフィクション賞を受賞。近著に『ルポ・外国人ぎらい』(PHP新書)がある。
 

 アルメニアとアゼルバイジャンの両国首脳は、ブリュッセルで4月6日、欧州連合(EU)の仲介で会談を行い、軍事衝突を繰り返す両国の係争地ナゴルノ・カラバフの和平交渉開始に合意した。

 アルメニアのパシニャン首相は、4月末までにアゼルバイジャン側と2国間国境委員会を設ける意向を示した。これに対し、アゼルバイジャンのアリエフ大統領は、この会談に関する声明を発表していない。両首脳が交渉を行ったのは、過去6カ月間で3回目となった。

ナゴルノ・カラバフでは、停戦から1年足らずで紛争が勃発している(salajean/gettyimages)

 この和平交渉のきっかけは、ナゴルノ・カラバフの軍事衝突が今年2月に再燃したことによる。ロシアとウクライナの戦争が泥沼化する隙を見計らい、アゼルバイジャンが係争地で平和維持活動を行う数千人のロシア兵に攻撃を仕掛けたのだ。

 3月25日、アゼルバイジャンは、トルコ製のドローン(Byraktah Combat Drone)を武器として使用し、係争地内のファルー(またはパルー)地区で、ロシア兵3人を殺害し、15人の負傷者を出している。EUをはじめ、各国がこの事件にすばやく対応した背景には、アルメニアとアゼルバイジャンの停戦が、1年足らずで破綻してしまったからだ。

ウクライナ危機下で再攻撃

 新型コロナウイルスが猛威を振るっていた2020年9月下旬、ナゴルノ・カラバフで軍事衝突が始まった。アルメニアとアゼルバイジャン双方の死者は、約6500人に上った。同年11月になって、停戦協定が結ばれている。

 最終的には、アルメニアが領土の一部を譲渡する形で停戦に至った。しかし、それから1年あまりが経過し、ロシアがウクライナに軍事侵攻を始めた今年2月、アゼルバイジャンがその隙を狙い、ナゴルノ・カラバフを再攻撃した形だ。

 ユーラシアネット(3月15日付)によると、係争地に供給されているパイプラインがアゼルバイジャン側によって切断され、3月8日から暖房が利用できない状態が続いたという。係争地のアルタク・ベグラリアン自治州長は、「アゼルバイジャンによるアルツァフ(アルメニア側の「カラバフ」の呼び方)の平和に対する挑発と脅しが、劇的に増えている」と訴えた。ロシアのウクライナ侵攻が泥沼化している状況を、アゼルバイジャンが利用している模様だった。

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