2024年12月22日(日)

田部康喜のTV読本

2022年4月9日

 ETV特集「ウクライナ侵攻が変える世界 私たちは何を目撃しているのか 海外の知性に聞く」(4月2日)は、ノーベル賞作家のスヴェトラーナ・アレクシエービッチ、思想家のジャック・アタリと国際政治学者のイアン・ブレマーにそれぞれインタビューした。

(ロイター/アフロ)

 世界の知の巨人たちの深い洞察は、第一次世界大戦と第二次世界大戦以来の歴史、とくに「冷戦」をどう読み解くかによって、今回のロシアの侵攻の根底にあるものを浮かび上がらせる。

米国の「軍産複合体」が持つ危険性

 思想家のジャック・アタリは、すでに6年前にロシアによるウクライナ侵攻を予言していた。フランスの歴代の大統領の顧問を務めた。1989年にベルリンの壁が崩れ、その後、旧ソ連が崩壊した後は、欧州の復興を提唱して、91年欧州復興開発銀行の初代総裁にもなった。

 「米国は、ロシアを民主主義陣営に入れることに消極的だった。欧州復興開発銀行は、民主主義に向かっていない国には融資をしない、という国際機関としては初めての条件を入れた。これについて、当時のロシアも同意していた」

 「クレムリンが欧州に入りたいと思えば可能だった。ロシアが、法の支配、腐敗政治からの脱却、完全な民主主義への意欲をみせていたら、欧州はロシアを歓迎した」

 欧州復興開発銀行の融資によって、旧東欧諸国のハンガリー、ポーランド、チェコ、スロバキア、ルーマニア、ブルガリア、そしてバルト3国では、民主主義かと経済改革がある程度成功を収めた。

 なぜ、ロシアが民主化できなかったのか? ジャック・アタリは答える。

 「それは、ロシアが巨大な国だったからだ。支配層の素行が悪く、西側諸国が介入しづらかった」

 「また、米国は常に敵を必要としていた。『軍産複合体』は議会から、軍事費をとるには敵が必要だった」

 「軍産複合体」とは、米国のアイゼンハワー大統領が退任にあたっての演説のなかで、軍隊と産業がいっしょになって、戦争の危機による利害を共有する体制のことに触れて、警告を放ったものである。

 ジャック・アタリは、「軍産複合体」の危険性に驚くべき警鐘を鳴らす。

 「(米国の)『軍産複合体』とクレムリンの過激派のなかには、利害関係が一致する人たちがいる」

 彼は、3月に自分のホームページで、次のようなメッセージを世界に発信した。

 「ロシアの人々を歓迎しよう。いま起こっているのは、前世紀からの冷戦の最後の残骸なのだ。私たちは最悪の事態を避けるために冷静を保つべきだ」

 「ロシアのオーケストラや音楽をボイコットするのは、バカげている。もっと関係して、もろ手を挙げて彼らと一緒にやるできです」


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