多くの死傷者を出しているロシアのウクライナ軍事侵攻で、第三次世界大戦の懸念が深まる中、欧州連合(EU)はウクライナへの武器支援など、特別措置に踏み切っている。
フランスのマクロン大統領は3月2日、「これは西側諸国とロシアの戦争ではない」と明言。「フランスも欧州もウクライナも北大西洋条約機構(NATO)も、この戦争を望まなかった。その反対で、我々はこれを阻止しようとした」とロシア政府を非難した。
停戦の可能性が見えない中、マクロン大統領は、国外のエネルギーに依存しないことや「EUもロシアの天然ガスに頼らず、原子力発電の開発を進めるべきだ」と主張した。
ロシア産天然ガスに依存してきたドイツは2月22日、ロシアからの海底輸送パイプライン「ノルドストリーム2」の承認を凍結。EUはこれまで、天然ガス40%と原油25%をロシアに依存してきた。
ドイツ「緑の党」の元党首で、平和主義者で知られるベーアボック外相は「プーチン大統領の侵略戦争以来、世界は変わった。……対戦車兵器とスティンガーミサイル(携行可能な地対空ミサイル)を使ってウクライナ人が戦えるよう、我々は支援する」とツイッター上に投稿した。
欧州がロシアに対し、エネルギー資源や経済制裁の面で強硬な姿勢を示すほか、軍事面でも例外的な措置を講じ始めた。注目すべき国は、スイス、スウェーデン、ドイツだ。
スイスは1815年以来、永世中立国を貫いてきたが、EUの対露経済制裁に参加。プーチン大統領らの口座凍結に積極的な姿勢を示している。
紛争国への武器提供を拒否してきたスウェーデンも、態度を一変させ、対戦車兵器をウクライナに提供。武器提供はソ連がフィンランドに侵攻した1939年以来だ。
またドイツでは、ショルツ首相が2月28日、国内の軍事費に今年度予算から1000億ユーロ(約13兆円)を投じ、国防費を国内総生産(GDP)の2%に引き上げる考えを明かした。
フォンデアライエンEU委員長は同日、ウクライナ軍支援にEUが4億5000万ユーロ(約580億円)の軍事費を投入すると発表。「今が大事な時である」と強調した。
戦後まれに見る東西対立の激化で、ロシア側は経済的困窮に見舞われるが、欧州側は急激なエネルギー不足や価格高騰に直面せざるを得ないかもしれない。