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世界の記述

2022年1月2日

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宮下洋一 (みやした・よういち)

ジャーナリスト

在欧ジャーナリスト。1976年生まれ。スペイン・バルセロナ大学大学院でジャーナリズム修士。『卵子探しています』(小学館)で小学館ノンフィクション大賞優秀賞。『安楽死を遂げるまで』(同)で講談社ノンフィクション賞を受賞。近著に『ルポ・外国人ぎらい』(PHP新書)がある。
 

 フランスの人気政治評論家、エリック・ゼムール氏(63歳)が11月30日、2022年4月に行われる仏大統領選挙への無所属での出馬を表明した。反移民を掲げ、欧州連合(EU)離脱も視野に入れたカリスマ指導者の行方に仏国内が揺れている。

大統領選候補のゼムール氏は反移民、反イスラムを掲げ支持を集めている (CHESNOT/GETTYIMAGES)

 無所属のゼムール氏は、動画投稿サイト「ユーチューブ」上で、出馬を表明。「もはやフランスを改革する時ではない。救う時だ。だから私は、大統領選に立候補することを決めた」と語った。

 ゼムール氏は、1986年から長年、仏紙『フィガロ』を中心に新聞記者を務めながら、テレビの討論番組などで政治評論家として人気を集めてきた。政界とは縁のなかった同氏の大統領候補が囁かれ始めたのは、2021年9月頃だった。

 これまでゼムール氏は、反移民や反イスラムの姿勢を全面的に訴え、「移民はわれわれの問題の原因ではない。われわれの問題を悪化させている」と豪語するなど、白人至上主義をちらつかせてきた。 マリーヌ・ルペン党首率いる急進右派政党「国民連合」のジュリアン・オドゥル広報官は、ラジオ局「フランスアンフォ」に対し、ゼムール氏は「論争家であって、フランスの未来に向けた行動がない」と非難。「提案も解決策も持っていない」と酷評した。

 11月下旬、ゼムール氏がマルセイユを訪問した際、同氏に中指を立てた市民に対し、同じ行為で仕返しをしている写真が国内外のメディアで報じられている。この報復行為について、政治学者のジャン・プト氏は「大統領選は遊びではない」と指摘。国家元首を狙う立場の人が「言葉やジェスチャーで物議を醸してはならない」と、前出のラジオ局に向けて語った。

 仏国内の複数の世論調査を見ると、出馬の表明すらしていなかったゼムール氏への支持率が、今年9月頃から急上昇していることが分かる。

 再選を狙うマクロン大統領の与党「共和国前進」の支持率は25%前後、ルペン氏の「国民連合」は20%前後を推移している。ゼムール氏は3番目の17%前後に食い込んでいるが、調査会社によっては一時、ルペン氏を上回る数値も出ていた。

 上位2候補で争われる4月24日予定の決選投票での得票率については、マクロン大統領が60%前後、ゼムール氏が40%前後という予測も示されている。

 メディア界に精通した人物ならではの戦略を駆使し、大統領選に臨むゼムール氏。番狂わせの可能性も否定できない。同氏が実権を握れば、反移民政策やEU離脱の動きもフランスで始まることになるだろう。

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佐藤主光(一橋大学大学院経済学研究科 教授)
PART2 「脆弱な資本主義」と「異形の社民主義」 日本社会の不幸な融合
 Column  飲み会と財政民主主義
藤城 眞(SOMPOホールディングス 顧問)
 COLUMN1  お金の歴史から見えてくる人間社会の本質とは?  
大村大次郎(元国税調査官)
PART3 平成の財政政策で残された課題  岸田政権はこう向き合え
土居丈朗(慶應義塾大学経済学部 教授)
​PART4 〝リアリティー〟なきMMT論  負担の議論から目を背けるな
森信茂樹(東京財団政策研究所 研究主幹)
 COLUMN2  小さなことからコツコツと 自治体に学ぶ「歳出入」改革 編集部
PART5 膨らみ続ける社会保障費 前例なき〝再構築〟へ決断のとき
小黒一正(法政大学経済学部 教授)
PART6 今こそ企業の経営力高め日本経済繁栄への突破口を開け
櫻田謙悟(経済同友会 代表幹事・SOMPOホールディングスグループCEO取締役 代表執行役社長)
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土居丈朗(慶應義塾大学経済学部 教授)

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Wedge 2022年1月号より
破裂寸前の国家財政 それでもバラマキ続けるのか
破裂寸前の国家財政 それでもバラマキ続けるのか

日本の借金膨張が止まらない。世界一の「債務大国」であるにもかかわらず、新型コロナ対策を理由にした国債発行、予算増額はとどまるところを知らない。だが、際限なく天から降ってくるお金は、日本企業や国民一人ひとりが本来持つ自立の精神を奪い、思考停止へと誘(いざな)う。このまま突き進めば、将来どのような危機が起こりうるのか。その未来を避ける方策とは。“打ち出の小槌”など、現実の世界には存在しない。

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