南太平洋に浮かぶフランスの海外領土ニューカレドニアで昨年12月12日、フランスからの独立を問う3回目の住民投票が行われ、「残留」が「独立」を大幅に上回った。
フランスのエマニュエル・マクロン大統領は同日、テレビ演説で「ニューカレドニアが残留を決めたことで、フランスはひときわ美しくなった」と表明した。
今回で最後となる住民投票の投票率は44%。残留派が96.5%で、独立派の3.5%を圧倒的に上回った。
独立派の先住民「カナク」は昨年9月、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、住民投票の延期を求めた。カナクの半数以上が投票所に出向かなかったことが大差の原因ともいわれる。
しかし、投票率が約2倍だった2020年の前回投票でも、残留派が53.3%で、独立派は46.7%にとどまった。18年にも、それぞれ56%と44%で、3回にわたる全ての住民投票で残留派が優位に立ってきた。
1853年にフランスに併合されたニューカレドニアの人口は、約27万人(同政府発表)。欧州の電子新聞『ローカル』によると、先住民カナクは人口の39%を占め、残留派の欧州系住民は27%と少数派のようだ。
ニューカレドニアの中小企業連盟(CPME)のヤン・ルシアン会長は、地元テレビ局の取材に対し「投票結果は重要でない。未来は共に生き、共に働くことであり、独立派も残留派も中立派もない」との考えを訴えた。
一方、独立を扇動したカレドニアン連合(UC)のベルナール・ルポ元党首は「(マクロン)大統領は、ニューカレドニアの利益でなく、フランスの利益を守るために残留を求めている。残忍な住民投票だ」と批判した。
なぜフランスは、独立に反対するのだろうか。ニューカレドニアは、レアメタル(希少金属)のニッケルの産出地で、世界の約25%を占めるといわれる。
加えて、フランスがこの海外領土の独立を妨げたい最大の理由は、インド太平洋全域で経済進出を続ける中国に対して、危機感を強めているからだ。
太平洋地域専門のアナリスト、バスチアン・バンデンディック氏は、フランス経済紙『レゼコー』に対し、「メラネシア(南太平洋上の島々)は、すでに中国の監視下に置かれている」と指摘。「残されているのはニューカレドニアだけだ」と警鐘を鳴らした。
3回の住民投票を終えたニューカレドニアだが、先住民らの再投票を求める動きは、今後も続きそうだ。
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