「Wedge」2022年5月号に掲載され、好評を博している特集「プーチンによる戦争に世界は決して屈しない」記事の内容を一部、限定公開いたします。全文は、末尾のリンク先(
Wedge Online Premium)にてご購入ください。
ロシアがウクライナ侵攻に乗り出した時、「21世紀の欧州で、こんなことがあり得るのか」と世界は唖然とした。だが、東欧のバルト三国(リトアニア、ラトビア、エストニア)やポーランドにとっては、長らく最も恐れていたことが現実化した瞬間だった。ポーランド大統領だった故レフ・カチンスキ氏は2008年8月、ロシア・グルジア(現ジョージア)戦争の終結時に首都トビリシを訪問し、「今日はジョージア、明日はウクライナ、その翌日はバルト三国だ。そして恐らく、次に順番がくるのがわが国ポーランドだ」と語った。
筆者の祖国であるリトアニアは何世紀にもわたって、大国政治の渦中にあった。18世紀、オーストリアとプロイセン、ロシアによってポーランド・リトアニア共和国の領土が分割され、リトアニアはロシアに併合された。1918年に独立を回復したが、第二次世界大戦が勃発すると、39年の「モロトフ・リッベントロップ協定(独ソ不可侵条約)」の下、ソ連に併合された。
ソ連の抑圧や強制労働収容所への送還、シベリア強制入植、そして50年間に及ぶ占領下で独立を求めてきた戦いの記憶がまだ鮮明に残る冷戦終結後、リトアニアは積極的に北大西洋条約機構(NATO)と欧州連合(EU)への加盟を目指した。近隣の旧共産主義国も同じ道を歩んだ。
こうした国々が2004年に加盟を果たす中、バルト三国の保安当局は絶えず、民主的な制度機構と西側とのパートナーシップへの信頼を損なうことを狙った、ロシアのハイブリッド戦争について警鐘を鳴らし続けた。