トヨタの動きに系列も危機感を露わにしている。中堅の系列の幹部はこう話す。「TNGAによって部品納入価格がほぼ半値になるでしょう。それを量でカバーしろということですが、共通化が進むことで、1つの部品を同時に500万個生産してトヨタの世界の工場に供給しなければならなくなります。イメージ的に生産量は10倍になりますが、サプライチェーンマネジメント(SCM)を再構築しなければなりません。いずれにせよトヨタの系列には今後厳しい試練が待ち受けています」。
トヨタ系大手の幹部も「あらゆる技術を取りまとめられるシステムサプライヤーにならなければ生き残ることができなくなるでしょう。今はトヨタに直接納入する1次下請けであっても、システムサプライヤーに納入する2次下請け化することで生き残りを図る企業も出てくるのでは」と見る。「これを契機に2次や3次の下請け企業では経営が厳しくなるところも出てきて、再編が起こるのではないか」(トヨタ担当記者)といった指摘も出始めている。
アーキテクチャー戦略が先行する欧州ですでに部品メーカーの再編が加速している。タイヤメーカーの独コンチネンタルが独シーメンスの自動車部品事業を買収し、そのコンチネンタルがベアリング大手の独シェフラーに買収されるといったM&Aが相次いでいる。日本の産業構造にも大きな変化が起きるだろう。
自動車メーカーは、アベノミクスによる円安で大幅な増収増益になった。しかし、為替変動による利益は所詮「あぶく銭」に過ぎない。TNGAに賛否両論があってもグローバル企業が競争で勝つためには自己改革を怠ることはできない。
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