忍び寄る一帯一路の影 日本にできる役割とは
アフリカにおける支援といえば、大規模なインフラ整備のイメージが強い。実際、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」も南スーダンに及んでいる。現地の新聞では中国によるインフラ整備の対価として石油の現物支払いが約束されたなど報じられており、中国資本による道路整備も各所で進行しているという。
日本もインフラ支援で大きな役割を果たす。22年5月にはナイル川の両岸を架ける「フリーダムブリッジ」が竣工。10年来のビッグプロジェクトが実を結び、南スーダンで2本目となる橋が誕生した。しかし、〝目に見えない部分〟で南スーダン人の心に入り込んでいるのが日本の支援の特徴だ。
南スーダン青年スポーツ省のエドワード局長は「内戦中は欧米をはじめほとんどの開発ドナーが手を引く中で、日本はPKOへの自衛隊派遣やJICAによる開発援助を続けて、危機的な状況だった南スーダンを見捨てなかった。それに加え、NUDを通じたソフトパワーによる支援も現地の人の心に確実に届いており、日本への信頼は厚い」と述べる。
日本流の支援のあり方について、JICA南スーダン事務所の吉田祐樹企画調査員は「インフラ整備で〝ハコモノ〟をつくることだけが国際協力ではない。南スーダンにとって最適だと思える支援を行うために知恵を絞っていきたい」と強調する。
国際関係論が専門の静岡県立大学国際関係学部の古川光明教授は「ハードな支援も重要だが、スポーツを通じたソフト面での支援は国民が当事者になれる。民族間の結束が重要な南スーダンにとって国民を主役とした支援は国づくりへの近道であるし、日本の役割はそこにあるだろう」と話す。
サッカーを共通言語に国際協力の道を探る
南スーダンと日本の縁はNUDだけにとどまらない。19年から21年まで、東京五輪を目指す南スーダン選手団を長期で受け入れていた前橋市は、五輪後もスポーツを通じた南スーダンの平和構築への支援を表明し、連携強化を図っている。10月13日、南スーダンの青年スポーツ省一行が前橋市をホームタウンとするJ2の「ザスパクサツ群馬」のクラブハウスに訪問。Jリーグの組織構造や高校年代の育成方法、サッカークラブをハブにした地域活性化の実例などを学び、クラブ職員と意見交換を行った。
南スーダン青年スポーツ省でナショナルプログラムコーディネーターを務めるウィリアム氏は「ザスパが中学生のユース選手一人ひとりに応じた育成プログラムを作り、高校卒業まで中長期的な計画を持ち指導していると知り、非常に参考になった。また、練習を見学した際に、若い選手たちが『コンバンハ』と挨拶してくれたことにも驚いた」と振り返る。
ザスパクサツ群馬は今後、南スーダンの高校年代の選手を練習生として受け入れる計画もあるという。鈴木健太郎COOは「サッカーを共通言語に地方の一サッカークラブでも国際協力ができる。今後もクラブとして南スーダンの役に立てるよう連携を深めていきたい」と意気込む。