2023年2月5日(日)

Wedge SPECIAL REPORT

2022年12月13日

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 FIFAワールドカップ(W杯)カタール大会はベスト4が出揃い、優勝をかけた熱戦が続いている。競技としてのサッカーに目がいくのは当然だが、4年に一度のW杯の機会だからこそ、少し視点を変えて「サッカー」に違った価値を見出してみたい。現に、アフリカの地でサッカーが「外交手段」の一つとして輝きを見せている。

南スーダンの〝JICAトーナメント〟

 半世紀にわたる紛争を経て、2011年に独立を果たした南スーダン。日本は13年に国連平和維持活動(PKO)へ自衛隊を派遣するなど、同国とのつながりも深い。しかし、独立以後も国づくりの途上で二度にわたり国内で紛争が発生するなど、60を超える多民族国家ゆえ、部族間の結束は容易ではない。

 国際協力機構(JICA)南スーダン事務所の山中祥史次長は「この国では国民が安心した生活を送ることができておらず、長年の紛争により民族間の猜疑心が深まっている。だからこそ、南スーダンでは紛争再発を抑止するために『国民の結束』が何よりも重要視されている」と話す。

 こうした背景もあり、スポーツを通じて国民の平和と結束を促すことを目標に16年から開催されているのが、スポーツ大会「国民結束の日(NUD:National Unity Day)」だ。JICAの支援により、19歳以下のアスリートが、男子サッカー、女子バレー、陸上競技などの種目でしのぎを削る。日本で例えるならば「国民体育大会(国体)」のようなイベントだ。

南スーダンのスポーツ大会「国民結束の日」において、サッカーは人気競技である(JICA)

 中でもサッカーは、選手やコーチ、観客が「チームプレー」「フェアプレー」「ルール」を共有するという点で、NUDの〝一丁目一番地〟となる競技だ。前出の山中次長は「部族を超えサッカーという競技を共有することは、紛争のトラウマを克服していくためにも非常に有効な機会であり、平和を実感できる瞬間だ」と話す。

 NUDは平和の象徴であるだけではなく、娯楽といえるものが少ない南スーダン人にとって「お祭り」のような位置づけであり、新聞やラジオ放送でも競技の様子が大々的に報じられている。そのスポンサーが日本であることの意義は大きく、現地では「JICAトーナメント」という呼称で親しまれているという。


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