2024年12月13日(金)

Wedge REPORT

2022年12月9日

清水東ジュニアユースの選手は練習前に「寺子屋」で2時間の学習に励む(WEDGE)

 サッカーファンにとってはまだまだ〝熱い〟冬が続きそうだ――。

 サッカー経験者が口を揃えて「夢の舞台」と評するFIFAワールドカップ(W杯)。日本代表はまたしてもベスト8の壁に阻まれ、「新しい景色」は次大会以降に持ち越された。それでも、優勝経験のあるドイツやスペインに勝利し、〝死の組〟を首位で突破した実績や選手たちの雄姿には、多くの人が心を揺さぶられたことだろう。

 日本のカタールW杯は幕を閉じたが、現地時間18日の決勝から間を置かず日本で開幕する大会がある。冬の風物詩ともいえる全国高校サッカー選手権だ。100年を超える歴史を紡いできた同大会からは数々のドラマと名選手が生まれてきた。

W杯戦士を多数輩出した
静岡県の名門校は今

 日本代表が初めてW杯に出場したのが1998年のフランス大会。この大会でメンバーに名を連ねた相馬直樹氏と斉藤俊秀氏、2002年日韓大会の西澤明訓氏、06年ドイツ大会の高原直泰氏、そして10年南アフリカ大会と14年ブラジル大会に選出された内田篤人氏……。彼らに共通するのが「出身高校」――静岡県立清水東高校(静岡市)――である。冬の選手権大会と夏の全国総体で計5回の優勝を誇るが、近年は、全国屈指の強豪校がひしめく県予選を突破できずにいる。

 古豪復活への一手になるか――。県内有数の進学校でもある同校サッカー部は、東北大学や名古屋大学などの旧帝国大学のほか、慶應義塾大学、早稲田大学などの名門私立大学にも毎年のように卒業生を輩出する。そんな同校がこの春、新たな挑戦として立ち上げたのが中学生年代の育成組織「清水東ジュニアユース」だ。

清水東ジュニアユースの練習の様子(SHIMIZU EAST)

 発足を主導した同校OBでゼネラルマネージャーも務める齋藤賢二氏は「長らく全国大会への出場は叶っていないが、サッカー部の伝統である『文武両道』を多くのOBが体現し、社会に出て活躍している。これを継承するだけではなく、中学生年代にも波及させることができれば、サッカー部と日本社会の双方に意義がある」と狙いを明かす。

 慶應義塾大学に進学しプロサッカー選手やクラブ経営者を経て、今年からJリーグのチェアマンに就任した野々村芳和氏や、同じく慶應義塾大学を卒業後、大手企業に勤めながらJリーグの試合に出場し「サラリーマンJリーガー」として脚光を浴びた日本サッカー協会(JFA)技術委員長の反町康治氏も同校サッカー部の出身だ。

 齋藤氏は「県内はもちろん、全国的に見てもグラウンドが人工芝になる高校も増え、高校生年代がサッカーに打ち込む環境は急速に良くなっている。清水東はそうした環境面では劣るかもしれないが『OBの活躍』という観点でみれば、まだまだ負けていない」と続けた。


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