2024年12月26日(木)

Wedge REPORT

2022年12月9日

学生時代から積み重ねる
「教える」という貴重な経験

 ジュニアユースの存在は、高校生にも刺激を与えている。

 サッカー部員の一人は「挨拶などの生活面も含め、一挙手一投足を〝見られている〟感覚がある。高校生側の部員全体の緊張感が増した」と変化を口にする。

 夏には高校生部員からの発案でサッカーを教える取り組みも始まった。高校生部員がジュニアユースチームの試合の動画を撮影し、チーム全体の戦術と個人のパフォーマンスを分析。それを踏まえて、ジュニアユースの練習プランやフィジカルトレーニングのメニューを考案し、実際に「教える」ところまで実践したという。

 齋藤氏は「学生の自主性を育むため、高校生が教える練習内容には口を出さない。ただ、『教える』という点でみれば、難しい言葉や抽象的な言葉を使うと中学生側に正確な意図が伝わりづらくなる。そこには指導者が入って一緒に伝え方を考えるようにしている」と語る。

 「高校生の時代から、人に『教える』経験を積めることは大変貴重だ。学習にしてもスポーツにしても、人に教えることを通じて自分自身の学びにつながることが少なからずある」。こう語るのは清水東高校の寺島明彦校長。「公立高校のため、中学生であるジュニアユースの選手や取り組みに直接的な関与はできない。ただ、スポーツや学問、人同士のつながりを地域で守り、育てるというモデルは、サッカーのみならず他のスポーツにも生かせるのではないか」(寺島校長)。

 齋藤氏も「ジュニアユースのメンバーだからといって清水東高校に入学できるという保証はない。また、この雰囲気を知った上で別の高校を目指しても全く問題ない。ただ、中学時代という密度の濃い時間を、勉学とサッカーの双方に全力で取り組むことで、少しでも学習の重要性やチームメートと協調する大切さを感じ、人生の〝原体験〟にしてほしい。社会に出て活躍することを念頭に置いた時には、そうした素養こそが重要ではないか」と選手たちへの期待を口にする。

 10月下旬、県予選の決勝トーナメントで同地域のライバル校、清水桜が丘高校に敗れ、今年も全国大会への出場は果たせなかった。

 こうした取り組みがすぐに実を結ぶことはないかもしれない。それでも、未来を見据え、サッカーだけにとどまらない形で新たな挑戦を続ける――。清水東高サッカー部は、捲土重来への道を歩み始めたばかりだ。

「清水東ジュニアユース」は古豪復活への一手になるか(SHIMIZU EAST)
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