2024年11月22日(金)

Wedge SPECIAL REPORT

2022年12月13日

サッカーはもっとうまく使うことができる

 国家間の関係だけではない。「サッカー」を手段に日本製品のプレゼンスを向上させているのが、飲料メーカーヤクルトの海外法人である「マレーシアヤクルト」だ。工業製品と違い、食品・飲料といった口にするものは「日本製」というブランドが現地で通用しにくい。

 そこで、同国で人気の高いスポーツである「サッカー」に目を付けた。人気のプロサッカークラブのクランタン・ユナイテッドやマレーシア代表とスポンサー契約を締結し、ヤクルトの知名度向上や販路拡大に努めている。10月には「インドヤクルト・ダノン」がプロサッカーチームのケララブラスターズFCとスポンサー契約を締結し、インドでも商品の認知度向上を目指す。

 Jリーグの元専務理事である木村正明氏は「マレーシアヤクルトの事例はサッカーを通じて日本製品、さらには、日本そのもののプレゼンスを高める先進的な取り組みだ。サッカーを手段にしたビジネス戦略がさらに広がることを期待したい」と話す。

 前出の古川教授も「不確実性が高い時代だからこそ国も企業も硬軟を織り交ぜた〝外交戦略〟が重要になる。特に、日本ではサッカーが平和や開発に活用できるという認識が少ないが、世界的にはかなり浸透している。サッカーはもっとうまく使うことができるはずだ」と話す。

 ロシア・ウクライナ戦争など軍事力を背景にした「ハードパワー」に脅かされる時代だからこそ、政府と民間企業とも、スポーツやサッカーが持つ「ソフトパワー」に価値を見出してみてはどうだろうか。

 
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 平成の時代から続く慢性的な不況に追い打ちをかけたコロナ禍……。 国民全体が「我慢」を強いられ、やり場のない「不安」を抱えてきた。 そうした日々から解放され、感動をもたらす不思議な力が、スポーツにはある。 中でもサッカー界にとって今年は節目の年だ。 30年の歴史を紡いだJリーグ、日本中を熱気に包んだ20年前のW杯日韓大会、 そしていよいよ、カタールで国の威信をかけた戦いが始まる。 ボール一つで、世界のどこでも、誰とでも──。 サッカーを通じて、日本に漂う閉塞感を打開するヒントを探る。
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