破天荒なトランピズムに翻弄されてきた米共和党が、中間選挙以後、ようやく本来の正統保守政党に立ち帰る動きを見せ始めている。果たして、かつてのレーガン政権当時のようなまともな安定政党へと脱皮できるかどうか――。それはひとえに、2年後の大統領選に臨む党指名候補の最終選択いかんにかかっている。
共和党の伝統からの3つの逸脱
昨今の米国政治の混乱ぶりを見るにつけ、1980年代半ばの「良き共和党時代」を懐かしむ人は少なくない。
カウボーイハットがよく似合う、スマートで清潔感漂う高齢の紳士がホワイトハウスの主として政治を取り仕切った古き良き時代。それは「レーガン共和党Reagan Republican」時代とも呼ばれた。
第40代ロナルド・レーガン大統領は、1981年から89年まで2期務めた。その間、「強いアメリカ」というスローガンの下、当時の超大国ソ連相手に徹底した軍事力増強に乗り出す半面、財政、貿易両面の〝双子の赤字〟に苦しめられることもあった。
しかし、アメリカ国民は、カーター前政権のころの〝マレーズmalaise(混迷)の時代〟から立ち直り、明るさと自信を取り戻した。外交面では、日韓との関係も含め、自由主義世界の結束を前進させた。
いくつか側近のスキャンダルがマスコミの話題となったものの、大統領自身は不正や疑惑とはまるで無縁だった。
ところが、21世紀に入り、こうした「偉大で伝統ある政党Grand Old Party(GOP)=共和党の愛称」の伝統を踏みにじる一人の〝異端児〟が突如として現れた。それが、第45代ドナルド・トランプ大統領だった。
トランプ政権(2017年~21年)は1期のみで終わったとはいえ、その間の内外政策は多くの点で、共和党の伝統から大きく逸脱したものだった。
外交面の失政でとくに目立ったのが、①環太平洋経済連携協定(TPP)からの一方的離脱、②北大西洋条約機構(NATO)はじめ西側同盟諸国との関係かく乱、③国際機関軽視の3つだ。
① については、もともと米国主導の下、中国との対峙を念頭に、アジアにおける自由主義経済圏の構築を企図して練り上げられた戦略構想だったが、大統領就任早々に「米国の利害に反する」として、あっさり反古にしてしまった。その後、逆に間隙を縫って中国が参加表明するに及んで、アジア諸国の動揺を広げる結果となった。
② については、「米国は欧州防衛のために莫大な負担を強いられている」として、独仏など主要国へのあからさまな批判を繰り返す一方、過激な「NATO解体論」までぶち上げるなど、米欧間に深刻な亀裂を生じさせた。
③ については、国連そのものの存在に疑念を投げ続けたのみならず、「国際保健機関」(WHO)、「国連教育科学文化機関」(UNESCO)、「国連難民高等弁務官事務所」(UNHCR)などからあいついで離脱。このほかにも、「イラン核合意」、「米露核軍縮協定」などの多国間、2国間取り決めまで破棄宣告するなど、世界を混乱させる要因をいくつも作り出した。