2024年4月27日(土)

バイデンのアメリカ

2022年12月19日

離れつつある上下院議員

 問題は、「共和党に災害をもたらした張本人」(Arizona Republic紙)であるトランプ氏が、上記のような状況の変化を顧みることなく、再び2024年大統領選に名乗りを上げた事だ。

 しかも、一部米メディア報道によれば、トランプ氏は去る11月15日の正式出馬発表に先立ち、上下両院の共和党議員たちに次々に電話攻勢をかけ、「トランプ候補」への早期支持表明を強く促したほか、側近には、支持を躊躇、または拒否した議員たちのリスト作成を指示、大統領に返り咲いた暁にはこれら議員への政治的報復さえ示唆したと伝えられる。

 これは明らかに、自らの立候補がすでに多くの議員たちに支えられていることを国民の前に大々的にアピールすると同時に、対立候補の出馬の芽を事前に摘み取ることを意図したものだった。

 ところが、政治メディア「The Hill」によると、11月末までの段階で、実際にトランプ候補支持を公式表明した共和党上院議員は、トミー・チューバービル議員(アラバマ州)の一人のみで、残り49人の共和党議員は「態度保留」のままだという。

 その大半が、①トランプ氏以外に今後、どんな対立候補が現れるか、②トランプ氏に対する司法省および地方検察刑事捜査がどのような展開を見せるか、③各種世論調査による支持率の推移などを見極めたうえで判断したい意向と伝えられる。

 有力上院議員の一人、ミット・ロムニー議員(ユタ州)は「多くの同僚たちが、わが党予備選候補がどんな布陣になるか、成り行きを見たいと思っている。私は個人的には、次回大統領選では、3連敗した過去の人物(トランプ氏)よりはるかに強力な候補がいると信じている」とコメントしている。

道のりは遠い「保守本流回帰」

 トランプ氏にとって、より強力な対抗馬になると目されているのが、フロリダ州知事のロン・デサンティス氏にほかならない。

 とくに、最新の二つの世論調査結果は、トランプ陣営にとって悩ましいものだった。

 まず、「Wall Street Journal」紙が今月14日、対象者を「予備選に強い関心を持つ共和党有権者」に限定して行った調査結果によると、デサンティス氏に対する支持率が52%だったのに対し、トランプ氏に対する支持率は38%にとどまり、未だ出馬表明していないデサンティス氏にすでに大きく水をあけられていることが分かった。

 一方、「USA Today」紙とSuffolk 大学が「共和党系有権者」を対象として行った合同調査によると、トランプ氏出馬に対する支持率は、わずか31%というショッキングな結果となった。これに対し、「トランプ以外の候補」に対する支持率は61%にも達した。

 こうした結果は、すでに一般世論のみならず、共和党有権者層の間でさえ、極端なトランピズムとの決別を求める声が大多数を占めつつあることを裏付けている。

 ただ、この事のみをもって今後、共和党の「保守本流回帰」が保証されるわけではない。問題は、2年後の予備選を通じ、党大会で誰が最終的に共和党指名候補となるかにかかっている。

 今のところ、デサンティス氏に対する期待感が先行しつつあるが、党大会に向けて候補者が乱立状態となった場合、その間隙を突いてトランプ氏が指名を獲得する可能性も皆無とは言えなくなる。まさに「2016年シナリオ」の再演だ。

 2024年の政権奪回に向けた共和党内の戦いは、年明けからし烈なものとなりそうだ。

   
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