鍵は消費者の支持
再出発の第一歩は最終目標の設定である。これまで通り、GMの国内栽培の実現を目標にするのであれば、実現を阻む多くの要因、例えば地域の同意、販売経路の確立、IPハンドリングの実施などについて、具体的な解決策を示す必要がある。まただれが何のために国内栽培を望み、だれがどのような理由で反対しているのか、肝心の農家はどのように考えているのかについても、十分な検討が必要だ。
栽培するのであれば大豆とトウモロコシになるのだろうが、その用途は食用油と家畜飼料だ。それでは世界的な価格競争に勝てる見込みはなく、あえて栽培を始めようとする農家はないだろう。
国内栽培を可能にするただ一つの方法は、消費者が喜んで受け入れるGMを開発することだ。たとえば、体内でビタミンAに変化するベータカロテンを作り出すゴールデンライスの研究がフィリピンを中心に進んでいる。ビタミンA欠乏症のため失明など重大な健康被害に苦しんでいるが、高価なビタミン剤は購入できない途上国の人にとっては大きな福音になるため、商業栽培が計画されている。
これまでのGMは農家の利益だったのだが、ゴールデンライスのように消費者が利益を実感できるようなGMを作り出すことが次の大きな課題である。
日本で期待されていたのが花粉症対策になるアレルギー緩和米だが、開発から10年以上たっても実用化していない。その理由はGMを栽培しなくても医薬品があるという事実である。
消費者が反対から賛成に回るGMとは何か。それは食用なのか。青いバラに続くGM国内栽培の拡大はその答えにかかっている。
最後に、これだけ大きな問題を解決するためには国が確固たる方針を作り、それに沿って施策を推進することが必要である。